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クレンペラー ベートーヴェン交響曲全集 仰ぎ見る偉大な名盤

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こんにちは、
ともやんです。

オットー・クレンペラー(1885-1973)は、1957年~60年に掛けてフィルーハーモニア管弦楽団とベートーヴェンの交響曲全集をステレオで録音しています。

クレンペラーのベートーヴェンの交響曲全集では、1960年に同じ手兵フィルハーモニア管とのウィーン芸術週間でのライヴ録音がありますが、残念ながらモノラル録音なのでステレオでは唯一の全集録音です。

なお、クレンペラーのベートーヴェンの録音は、数多く残されていてライヴ録音も多いですが、

それは個別にレビューしていますし、今後も続けて行きます。

クレンペラーの名盤 ベートーヴェン第5番 不屈の魂が生んだ名盤
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全集の中で特に第5番は凄すぎる演奏です。

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クレンペラーの演奏に魅せられて

僕が初めてオットー・クレンペラーの存在を知ったのが、中学2年か3年の頃で、クレンペラーは既に引退していたけどまだ健在だった1971~2年頃でぎりぎり間に合ったという感じです。

EMIから出ているLP2枚組のシューマンの交響曲全集を買ってよく聴いていたものです。

このLPは今でも持っていますが、LPということもありほとんど聴かずじまいです。

そして月日は流れ、この人は本当に凄いひとなんだと分かったのは、僕が社会になった80年代になってからでした。

僕が影響を受けた評論家・宇野功芳氏の本からで、80年代になりCDというメディアが出てきて、80年代の後半からは中古レコード店にはLPが安価に出るようになり、クレンペラーのLPを買い集めたりしました。

今日ご紹介するベートーヴェン交響曲全集もまだ独身時代(多分’90年前後)に渋谷のディスクユニオンで購入したと記憶します。

この全集は、1957年に第1番、第2番、第4番、第6番”田園”、第8番、第9番”合唱”と集中して録音され、59年10月に第3番”英雄”、第5番が、最後の第7番が、’60年10月~11月に録音されました。

当初のスケジュールは分かりませんが、途中2年間のブランクがあるのは、その間、寝タバコによる大やけどを負って生死を彷徨っていたという事件があったためです。

ただ、クレンペラーが凄いのは怪我から復帰してからの方が演奏に深みが出て完成度も高くなったことです。

改めて通して聴いてやはりこの人は偉大な指揮者だったと再認識せずにはいられません。

以下、曲ごとに簡単にコメントをして行きます。

交響曲第1番ハ長調作品21

交響曲第1番ハ長調作品21

Ⅰ(09:46)Adagio molto-Allegro con brio
Ⅱ(08:48)Andante cantabile con moto
Ⅲ(04:01)Menuetto.Allegro molto e vivace
Ⅳ(06:17)Finale.Adagio-Allegro molto e vivace
録音1957年10月 ロンドン、アビーロードスタジオ

ベートーヴェン:交響曲 第1番&第8番 オットー・クレンペラー

この全集全体に言えることですが、両翼に配したヴァイオリンと掛け合いと木管を音色のチャーミングで美しこととそれを浮き立たせる演出がたまりません。

この第1番はそれが特に顕著で、遅めのテンポと相まって噛みしめるように展開する演奏です。

また、天上から俯瞰するような客観的な演奏は、俗世間から解脱したような晴れ晴れとした印象を与えてくれます。

交響曲第2番ニ長調作品36

交響曲第2番ニ長調作品36
Ⅰ(13:18)Adagio-Allegro
Ⅱ(13:05)Larghetto
Ⅲ(03:53)Allegro
Ⅳ(07:01)Allegro
録音1957年10月 ロンドン、アビーロードスタジオ

ベートーヴェン:交響曲 第2番 「コリオラン」序曲 「プロメテウスの創造物」序曲

第2番は、全集の中で第8番と共に若々しい演奏を展開しています。

テンポもすこし早めにして覇気溢れる演奏は、この曲の持つ青春の薫りを感じさせます。

過ぎ去った遠い青春時代を思い返して、おれもまだまだ元気だぜって感じではしゃいでいる感じがいいですね。

交響曲第4番変ロ長調作品60

交響曲第4番変ロ長調作品60
Ⅰ(12:18)Adagio-Allegro
Ⅱ(09:54)Adagio
Ⅲ(05:47)Allegro vivace
Ⅳ(07:12)Allegro
録音1957年10月 ロンドン、アビーロードスタジオ

ベートーヴェン:交響曲 第4番 「献堂式」序曲 オットー・クレンペラー

クレンペラーは第4番を特に得意としていたのでしょうか、ライヴの録音も残されていて、80歳を過ぎてからのバイエルン放送響との超スローテンポで結晶化された名演もあります。

このスタジオ録音も第1番と同様、清々しい演奏で、僕は特に第3楽章と終楽章が絶品だと思います。

両翼に配置された第1、第2ヴァイオリンの掛け合い、そして木管のチャーミングな響きとそれを浮き立たせる演出やヴァイオリンを抑えて、チェロの内声部を浮き上がらせる憎い演出もしていて、老練な曲の展開はたまらない魅力です。

交響曲第8番ヘ長調作品93

交響曲第8番ヘ長調作品93
Ⅰ(09:43)Allegro vivace e con brio
Ⅱ(11:09)Allegretto scherzando
Ⅲ(06:14)Tempo di menuetto
Ⅳ(13:18)Allegro vivace
録音1957年10月 ロンドン、アビーロードスタジオ

ベートーヴェン:交響曲 第1番&第8番 オットー・クレンペラー

第8番は、この全集の中で第2番と共に若々しさと覇気を感じさせる演奏です。

多分、この録音時期の’57年は、クレンペラーの演奏スタイルの過渡期で、60歳代の力強さと70歳以降の老練さの合わせった時期かもしれません。

クレンペラーの過渡期を貴重な録音

後年のEMIから出ている膨大なステレオ録音しか知らない方は、クレンペラーが60歳頃までは、即物的でテンポも速く素っ気ない演奏をしていた指揮者というのは、分かり難いと思います。

それが数々の肉体的ハンディを克服した、’60年以降に悠然たるスタイルを獲得したと思います。

だからこのベートーヴェンの交響曲全集が録音された時期は、ちょうど過渡期にあたり、クレンペラーの芸術を知るには持って来いの録音でもあります。

交響曲第6番ヘ長調作品68“田園”

交響曲第6番ヘ長調作品68“田園”
Ⅰ(12:57)Allegro ma non troppo
Ⅱ(13:18)Andante molto mosso
Ⅲ(06:33)Allegro
Ⅳ(03:44)Allegro
Ⅴ(09:10)Allegretto
録音1957年10月 ロンドン、アビーロードスタジオ

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ベートーヴェン:交響曲 第6番 「田園」 オットー・クレンペラー

田園に関しては、CDのライナーノーツから宇野氏のコメント記します。

とくに最初の二つの楽章が極めて美しい演奏である。第1楽章はテーマが霧の中から立ち昇ってくるような冒頭の雰囲気からして惹きつけられてしまう。あまりにも奥深くて中に何があるのか分からないくらいだが、その後もいっさいの力みを排した純音楽的な味わいが何ともいえない。

交響曲第9番ニ短調作品125“合唱”

交響曲第9番ニ短調作品125“合唱”
Ⅰ(16:56)Allegro
Ⅱ(15:34)molto vivace
Ⅲ(14:55)Adagio-Allegretto-Adagio
Ⅳ(24:25)Presto-Allegro
録音1957年10月 ロンドン、アビーロードスタジオ

オーセ・ノルモ・レーヴベリ(ソプラノ)
クリスタ・ルードヴィッヒ(メゾ・ソプラノ)
ワルデマー・クメント(テノール)
ハンス・ホッター(バリトン)
フィルハーモニア合唱団

ベートーヴェン:交響曲 第9番「合唱」 劇音楽「エグモント」(抜粋) オットー・クレンペラー

第九に関しても宇野氏のコメントを引用いたします。

「第9」について簡単に触れておこう。

これは過渡期のクレンペラーの姿が如実に表れた演奏である。第1楽章のテンポは決して遅くないし、主題の提示、再現もまことに素っ気なく、音の即物的な動きだけを追っている。
第2楽章のスケルツォだけは最晩年のスタイルだが、第3楽章は他の誰よりも速いテンポであっさりと流し、第4楽章ではいっそう若い頃のスタイルに接近している。
前者のコーダにおける金管の警告の場面、後者の声楽が入る前までのオーケストラだけの場面、いずれも少しでもドラマティックにならないように気をつけているが、それでいてバリトン独唱がテーマを歌い出す前後にはルフトハウゼやルバート、表情の変化をさかんにあたえ、ロマンティックな指揮ぶり示す。そのアンバランスは実に興味深い現象だと思う。

 

永遠の名演の名盤

最後に紹介する3曲は、大やけどから復帰した59年と60年の録音で、完全に晩年のスタイルを確立させた時期と思います。

しかもこの3曲の録音は、レコード史上に燦然と輝く、名曲の名演名盤であることは間違いありません。

交響曲第3番変ホ長調作品55“英雄”

交響曲第3番変ホ長調作品55“英雄”
Ⅰ(16:34)Allegro
Ⅱ(16:51)Adagio
Ⅲ(06:31)Allegro
Ⅳ(13:15)Allegro-Andante-Presto
録音1959年11月 ロンドン、アビーロードスタジオ

ベートーヴェン:交響曲 第3番 「英雄」 オットー・クレンペラー

孤高の指揮者クレンペラーの面目躍如的な非大衆的な英雄で、故宇野功芳氏曰く、

“年を取って初めて分かる「エロイカ」といえよう”

まさに静けさに満ちた「エロイカ」ですが、僕はこの味わいにはたまらない魅力を感じます。

第1楽章は他人事のように淡々を展開しますが、オフビート気味に入るティンパニなど味があります。

つまり僕もこの静かなら「エロイカ」が分かる年齢になったのでしょうか。

交響曲第5番ハ短調作品67

交響曲第5番ハ短調作品67
Ⅰ(08:51)Allegro
Ⅱ(11:09)Andante
Ⅲ(06:14)Allegro
Ⅳ(13:18)Allegro-Presto
録音1959年10月 ロンドン、アビーロードスタジオ

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第7番 オットー・クレンペラー 、 フィルハーモニア管弦楽団
この録音の約1年前にスイス・チューリッヒの自宅で寝タバコが原因で大やけどを負う事故に遭遇しています。

そして復帰の最初の仕事はこのベートーヴェン第5の録音。

まさに不屈の魂が生んだ名演です。

拙ブログにこの名演に惚れたあまりに自社レーベルから復刻まで行ったアリアCDの復刻盤のレビューをしたためています。

お読み頂ければ幸いです。
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クレンペラーの名盤 ベートーヴェン第5番 不屈の魂が生んだ名盤

交響曲第7番イ長調作品92

交響曲第7番イ長調作品92
Ⅰ(14:01)Poco sostenute-vivace
Ⅱ(10:00)Allegretto
Ⅲ(08:39)Presto
Ⅳ(08:38)Allegro
録音1960年10月-11月 ロンドン、アビーロードスタジオ

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第7番 オットー・クレンペラー 、 フィルハーモニア管弦楽団
数多いのこの曲の録音の中でも大傑作な演奏です。

これだけの風格と品格、そして秘めた情熱を湛えた演奏はなかなかないと思います。

かつて、この演奏を称して「情熱の氷づけ」と言ったのは故宇野功芳氏です。

このフィナーレについての宇野氏のコメントを引用いたします。

何といっても白眉はフィナーレであろう。これ以上遅く重いテンポを最後まで一貫させた演奏も例がないが、その落着きと大家の品格の中に凄まじいばかりの魂の燃焼がある。
しかも細部の緻密、繊細なニュアンスはその比を見ず、表面はあくまでクールなのだ。
僕はかつてこの「第7」を評して≪情熱の氷づけ≫と呼んだのも理解していただけるだろう。

この最後の3曲は、聴かずには死ねない名盤中の名盤です。



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