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ケーゲル ベートーヴェン 最期の来日公演 慟哭の凄演

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こんにちは、
ともやんです。

ヘルベルト・ケーゲルが最後に来日した時のNHKの実況録音のCD化です。
また、現在タワーレコードからLP3枚組でも出ています。

CDの解説文を書いている許光俊氏によると、許氏はコンサートに行ったのではなく、
あとでFM放送で聴いて、その演奏の異常さに驚いたと確か著書に書かれていたと思います。

この日のプログラムは、
全てベートーヴェンで(アンコールのみバッハ)
エグモント序曲
交響曲第6番”田園”
交響曲第5番
G線上のアリア(J・S・バッハ)アンコール曲

第5番については別途ご紹介します。

あまり前評判の高いコンサートではなかったようですが、NHKが実況録音していたおかげで、この歴史的名演が聴くことができます。

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ケーゲルの名演・名盤 1989年10月18日サントリーホール

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
「エグモント」序曲 Op. 84
“Egmont”Ouverture, Op. 84

1.(10:26)”Egmont”Ouverture

**************************************

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
交響曲第6番 ヘ長調 「田園」 Op. 68
Symphony No. 6 in F Major, Op. 68, “Pastoral”

2.(12:21)I. Awakening of Cheerful Feelings Upon Arrival in the Country: Allegro ma non troppo
3.(15:31)II. Scene by the Brook: Andante molto mosso
4.(03:37)III. Merry Gathering of Country Folk: Allegro
5.(04:08)IV. Thunderstorm: Allegro
6.(10:23)V. Shepherd’s Song: Happy and Thankful Feelings after the Storm: Allegretto
total(46:00)

ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団 – Dresden Philharmonic Orchestra
ヘルベルト・ケーゲル – Herbert Kegel (指揮)

1989年10月18日 サントリーホール NHKによる実況録音
Live:Suntory Hall,Tokyo/18th October 1989(STEREO)

ベートーヴェン:序曲「エグモント」、交響曲第6番「田園」/ケーゲル(指揮)、ドレスデン・フィル

↑ ↑ ↑

こちらはCD

【LPレコード】 ベートーヴェン: 「エグモント」序曲, 交響曲第5番, 第6番, 他<完全生産限定盤>
↑ ↑ ↑
なんとタワーレコードからLPでも出ています!

「ケーゲルがこの夜ほど美しく歌ったことはない」
慶応大教授 許光俊
東ドイツに殉じた指揮者ケーゲル最期の来日演奏会
異様なオーラにつつまれ暗闇から青白い炎を発光する美演
ケーゲルの音楽的遺言状!

許光俊氏も絶賛しケーゲルの代表盤とされる名演がついにLP化!「奈落が口をあけて、聴き手をその闇の中に引き込むかのよう」と評される暗黒の美演エグモント序曲ではじまり、まさに真空美で終わるG線上のアリアまで一夜のコンサートを完全収録。また今回のLP化の出来は大変にすばらしく、弦の美しさがよりいっそう引き立ちます。田園の極上の美しさ、運命の青白い炎の迫真!一度聴いたら忘れられぬ味わいです。
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料 (2016/09/07)

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ケーゲルの名盤 激動の国と時代に生きたメッセージ

来日当時、ケーゲルもドレスデンフィルのメンバーも東ドイツの人たちでした。

ところがこの来日公演の1ヵ月後、ベルリンの壁は崩壊し、東西ドイツは統一されることになったのです。

そしてなんとベルリンの壁崩壊の1年後、ケーゲルはピストル自殺で人生の幕を降ろしています。

理由はなんだったのだろうか。軽々しく言えないことだけはわかります。

さて、演奏は、エグモント序曲の最初の音が出た瞬間、ぶっ飛んでしまいます。

なんだ、この重苦しい空気と遅いテンポは、いままで聴いたエグモント序曲の中で、もっとも個性的な演奏だと思います

そして田園。
誠に美しい演奏、いや美しすぎる演奏です。

ケーゲルは、何事もなかったかのように淡々と進めていきますが、第5楽章も終了間近に急にテンポが落ちて、終わることに後ろ髪を引かれるように何か寂しさを残しながら終わります。

何か、一つの時代が終わった歴史的な演奏でした。

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ヘルベルト・ケーゲルの名盤 許光俊ライナーノーツより

音楽評論家で慶應義塾大学の教授である許光俊氏が、このCDに寄せてライナーノーツを書かれています。

許氏はこの日のコンサートに行かれていませんが、後日FM放送で聴いて、その異常さに戦慄されようで、この日のケーゲルの演奏にはかなりお思い入れがあるようです。

許氏の解説文全文を載せたいところですが、ここでは一部抜粋してご紹介します。

“このCDに収録されているのは、ヘルベルト・ケーゲル最後の来日時の記録だ。公演が行われたのは1989年10月。翌11月には、ベルリンの壁が崩壊するという歴史的事件が起きている。

東ドイツ国内には一発触発というか何かが起きるという不安と期待の空気があった。この演奏も、そうした空気を反映してか、異常な雰囲気を持っている。

熱心な社会主義者だったケーゲルの胸のうちに去来するものは何だったのか。もとより他人がたやすく言葉にできるものではなかろうが、異常な緊迫感や心理的な不安定をこの演奏が抱え込んでいるのは間違いないのである。

ブルーノ・ワルターがオーストリア併合前にウィーン・フィルと演奏したマーラーの交響曲第9番や、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが第二次世界大戦後にベルリン・フィルに復帰したときの演奏のような、ギリギリの緊迫感がある。

ひとことで言えば、これは普通の演奏ではないし、歴史的な演奏とすら呼ぶべきかもしれない。”

“最初の《エグモント》序曲冒頭の空虚な和音からして、聴く者をうめかせるに十分だ。一晩の音楽の楽しみを期待してやってきた聴衆に対する、何という挨拶の一撃だろうてか。極度に遅いテンポで一貫している序奏は、まるで奈落が口を開けて、聴き手をその闇の中に引き込むかのようだ。”

田園の演奏についても

“最後に、またも思いがけないことが起きる。第2楽章最後と同様、音楽は突如として光を失ってしまうのだ。8分過ぎから止まらんばかりに速度は落ち、ひとつひとつの音に、惜別”としか言いようがない思いが込められ始める。

音楽は最後の最後まで来て、突如自分が終わらねばならないことに気づいて恐怖し、必死になって音符にしがみついているかのようだ。”

ベートーヴェン:序曲「エグモント」、交響曲第6番「田園」/ケーゲル(指揮)、ドレスデン・フィル

ぜひ、ご自分の耳で確かめてください。

まとめ

このCDには、許氏とともに渡辺和彦氏のインタビュー記事も載っています。
この記事も興味深いものです。

渡辺氏が、ケーゲルにインタビューしたのは、1989年10月19日、つまりコンサートの翌日で、予定時間を大幅に超えて2時間近く話し込んだそうです。

偶然にもその日は、旧東ドイツホーネッカ議長が解任されたと報道があった日で、ケーゲルは、芸術上も政治的にも反骨だったそうで、この政変を大変喜び、祝杯を挙げようとまで渡辺氏に言ったそうです。

このコンサートとインタビューから約1年後の1990年11月20日にケーゲルはピストル自殺をしました。

享年70歳。

外電では「長いことうつ病だった」とだけ伝えたそうですが、ケーゲルの心の中までは誰もわからないでしょう。

この日のコンサートの実況録音が、聴かずに死ねない、異常な演奏です。




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