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トスカニーニ 伝説のベートーヴェン交響曲全集 1939年の凄絶

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こんにちは。
ともやんです。

20世紀前半、というよりも歴代の指揮者の中での巨匠中の巨匠トスカニーニ(1867-1957)が亡くなって60年以上が経ちました。

トスカニーニは、1954年の4月の引退後、57年1月26日に亡くなりましたので、フルトヴェングラー(1886-1954)と共に、57年9月生まれの僕にとっては全く過去の人です。

でも、この二人の録音は、LPやCDなどの媒体を通じていまだに多くの人達が聴いたり研究したりしています。

第二次大戦前のごく限られた人たちの時から、この二人の演奏スタイルの対比は語られて来たので、僕がとやかく言うことではないですが、二人の演奏内容については尽きない探求心を感じるのは確かです。

今日は、名盤の誉れ高いトスカニーニのベートーヴェン交響曲全集(1939年盤)をご紹介します。

ベートーヴェン・フェスティヴァル 1939 アルトゥーロ・トスカニーニ 、 NBC交響楽団

CDジャケットの過激なコピーをご紹介します。

“巨匠トスカニーニによる伝説的ベートーヴェン・ツィクルス’39
老け込み前のトスカニーニが燃焼したNBC響との凄絶なライヴ!”

ベートーヴェンの交響曲を聴いてこれほどの高揚感を与えてくれる演奏録音はないですね。

なお僕はこの全集の第5番だけ取り上げてこのブログにも記しています。

トスカニーニ/トスカニーニの名盤 弛んだ精神に褐を入れるベートーヴェンの“運命”
↑ ↑ ↑
全集の中で特に第5番は凄すぎる演奏です。

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トスカニーニの演奏に魅せられて

僕は、クラシック音楽を聴き始めて50年近く経ちます。

トスカニーニの名前は、当然最初から知っていましたが、なかなか聴こうと思いませんでした。

僕は、クラシック音楽を聴き始めた’70代は、カラヤン、ベームの全盛時代で、二人の優秀なステレオ録音が、毎週のように新譜が出ていたのと、往年の巨匠では、ブルーノ・ワルターの優秀なステレオ録音が出ていて、モノラルしかないトスカニーニやフルトヴェングラーのLPを選び機会は少なかったし敬遠していたのだと思います。

時は流れ、20世紀も過ぎ去り、21世紀となり、僕にトスカニーニの凄さを教えてくれたのが、このブログで何度かご紹介している、CD通販店「アリアCD」の店主、松本大輔氏でした。

松本氏が2003年に出版した「クラシックは死なない!あなたの知らない新名盤」を読んでからでした。この本の1番最初に取り上げられていたのが、”トスカニーニ/衝撃のラスト・コンサート”でした。
↓ ↓ ↓
トスカニーニ 最後のコンサート 聴かずに死ねない歴史的録音
※このブログでも取り上げています。

早速、このCDを入手して聴いて、滅茶苦茶感動して、これは大変な人だった、と認識して、その時から少しずつトスカニーニのCDを聴きだしたのです。

そしてベートーヴェンの交響曲全集。しかも1939年のツィクルス。
全曲聴いてやはり凄かった!MEMORIES渾身のリマスターも素晴らしいです。

以下、CDの帯に記載されている熱いコメントを引用します。

“トスカニーニのベートーヴェン・ツィクルスの中でも最も評価の高いものが当1939年の連続演奏会ライヴです。ほぼ毎週のペースで繰り広げられた名演集です。

この時代トスカニーニは体力的に充実していた様子で、NBC響を完璧に掌握。自由自在なテンポ変化を見せるかと思えば、インテンポの部分では厳格さ強烈さも際立っております。巨匠も歌ったり、怒鳴ったりとかなり高揚しております。

特に戦後の演奏に見られる老け込んだ感じが全くありません。

M&Aレーベルの音質も優れておりましたが、当盤の音質はそれを上回ります。具体的に申しますと、あのレーベルらしい合成した拍手やデータ不完備もなく、ノイズの取りすぎもありません。それ故に生々しい息遣いが感じ取れるのです。正にMEMORIES入魂のリマスタリングです。”

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交響曲第1番ハ長調作品21

交響曲第1番ハ長調作品21
ⅠAdagio molto-Allegro con brio
ⅡAndante cantabile con moto
ⅢMenuetto.Allegro molto e vivace
ⅣFinale.Adagio-Allegro molto e vivace
録音1939年10月23日NBC8Hスタジオ

序奏から主部に入ってからの速さに驚かされます。
しかし、例えば木管やチェロなどが旋律を奏する時なんか、微妙にテンポを落としてカンタビーレを効かせたり、時折トスカニーニの唸り声も聴かれる渾身の演奏です。

第2楽章ではぐっとテンポを落とし、しんみりとしたカンタビーレが印象的です。
第3楽章と終楽章は、その軽快にして弾力のある推進力が素晴らしいです。なんか音のぴょんぴょん跳ねている感じで躍動感に溢れる演奏です。

交響曲第2番ニ長調作品36

交響曲第2番ニ長調作品36
ⅠAdagio-Allegro
ⅡLarghetto
ⅢAllegro
ⅣAllegro
録音1939年11月4日NBC8Hスタジオ

第1番と同じことがいます。
曲の完成度から言って、こちらの演奏がより高揚感を感じさせます。
また、木管のソロや内声部を大きくしたりチャーミングな部分も感じる演奏になっています。

交響曲第3番変ホ長調作品55“英雄”

交響曲第3番変ホ長調作品55“英雄”
ⅠAllegro
ⅡAdagio
ⅢAllegro
ⅣAllegro-Andante-Presto
録音1939年10月23日NBC8Hスタジオ

トスカニーニのエロイカの評論は、故宇野功芳氏の名文があるのでそれを引用します。

“常に先へ先へと踏み込んでゆく一気呵成のテンポがここにあり、含みのないダイナミカルな威力は他に類例を見ず、トランペットやティンパニを初めとして、すべての楽器が快刀乱麻を断つように打ち込まれる。迫力があるといっても、他の指揮者と次元が違うのだ。聴いていて気持が高揚の極に達してしまう。”

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トスカニーニのベートーヴェン交響曲全集より第4番・第5番・第6番”田園”

交響曲第4番変ロ長調作品60

交響曲第4番変ロ長調作品60
ⅠAdagio-Allegro
ⅡAdagio
ⅢAllegro vivace
ⅣAllegro
録音1939年11月4日NBC8Hスタジオ

第1楽章は、ゆったりした序奏部から、主部に入ってからもテンポは抑えめです。だからか細部の決め細やかニュアンスがチャーミングでさえあります。

この日は、第2番と第4番の2曲のプログラムで、この日に関して、トスカニーニに何か思うところがあったのでしょうか、いつもの快速テンポをやや抑えめにして、強弱のダイナミクスを大きくし、細部へのきめ細やかさに神経を注いでいる様に感じます。

交響曲第5番ハ短調作品67

交響曲第5番ハ短調作品67
ⅠAllegro
ⅡAndante
ⅢAllegro
ⅣAllegro-Presto
録音1939年11月11日NBC8Hスタジオ

わぁ、コンサートでこんな演奏を聴いたら立ち上がれなくなるかもしれない。

それほど凄すぎる演奏で、僕は、このブログでこの演奏だけ取りあげて”コクがあるのにキレがある”なんてスーパードライの宣伝文句みたいに下手な表現をしていますが、
↓ ↓ ↓
トスカニーニの名盤 弛んだ精神に褐を入れるには”運命”を聴け!

ここでも、故宇野功芳氏の1982年出版の”僕の選んだベートーヴェンの名盤”から、この演奏に対する出色のコメントがあるので引用いたします。

“それにしても何という結晶化した迫力であろう。ここにはヨーロッパの伝統、ドイツ風の含み、暗さなど皆無で、すべてむき出しの音だけで勝負している。金管とティンパニは終始最強奏されるが、不思議に粗さを見せず、第一楽章コーダのものすごいスフォルツァンドや、なだれ込むようなテンポは凄絶の一語に尽きる。とくに優れているのは終楽章で、ティンパニをトレモロにせず、楽譜通りの刻みで盛り上げていく冒頭のすばらしさ、遅めのテンポを一貫する偉大な進軍、踏みしめるリズムの見事さ、312小節からの圧倒的な和音の連続から、弾力に充ちたコーダの運びなど、他の指揮者には絶対に不可能だろう。”

この後も称賛の文章が続くのですが、ベートーヴェンを愛するすべての人はこの演奏を聴くべきだと思います。

交響曲第6番ヘ長調作品68“田園”

交響曲第6番ヘ長調作品68“田園”
ⅠAllegro ma non troppo
ⅡAndante molto mosso
ⅢAllegro
ⅣAllegro
ⅤAllegretto
録音1939年11月11日NBC8Hスタジオ

全体的な表現としては普通です。
第1楽章の木管が雛ぎた響きでおやっと思わせる部分が曲想に合っています。
第4楽章の嵐の演奏が最高です。ダイナミクスと金管とティンパニの強奏部分は素晴らしいです。

トスカニーニのベートーヴェン交響曲全集より第7番・第8番・第9番”合唱”

交響曲第7番イ長調作品92

交響曲第7番イ長調作品92
ⅠPoco sostenute-vivace
ⅡAllegretto
ⅢPresto
ⅣAllegro
録音1939年11月18日NBC8Hスタジオ

交響曲第8番ヘ長調作品93

交響曲第8番ヘ長調作品93
ⅠAllegro vivace e con brio
ⅡAllegretto scherzando
ⅢTempo di menuetto
ⅣAllegro vivace
録音1939年11月25日NBC8Hスタジオ

交響曲第9番ニ短調作品125“合唱”

交響曲第9番ニ短調作品125“合唱”
ⅠAllegro
Ⅱmolto vivace
ⅢAdagio-Allegretto-Adagio
ⅣPresto-Allegro
ジャルミラ・ノヴォトナ(S)、ケルステン・トルボルイ(MS),ジャン・ピアース(T),ニコラ・モスコナ(Bs) ウェストミンスター合唱団(ジョン・フィンリー指揮)
録音1939年12月2日NBC8Hスタジオ

第7番、第8番も高揚感を十分に味わわせてくれる演奏ですが、つい第5番を聴いた後では、欲深くなり、トスカニーニならもっと凄い演奏が出来るはず、と思ってしまします。

でもそれはないものねだりなのは分かっていますが。第7番の終楽章の盛り上がりはさすがという感じです。

それに対して僕は第9番の出来に対しては少し残念です。
第2楽章と第3楽章は、普通の出来なのですが、残念なのが第1楽章と合唱の終楽章。

ともになんでそんなに急ぐのと言いたいくらいせかせかした印象を受けます。

トスカニーニと言う人は、その評価は難しい人で、吉田秀和氏もその名著「世界の指揮者」で、

“それにしても、トスカニーニについて書くことになり、何枚かのレコードをきいてみて、彼を正確に評価するのがいかにむずかしいかを、私は改めて痛感する。”

と正直に書かれています。

ちなみに吉田氏は、トスカニーニの最晩年に運よく実演を聴かれています。

この第9では、トスカニーニはテンポをかなり動かしていて、それは特に終楽章に感じます。

トスカニーニは、第9の録音を複数していますので、彼の第九に関しては他の演奏との比較もして改めて検証したいと思います。

永遠の名盤中の名盤

1939年の放送録音ということで、今から80年近く前の録音ですが、さすがアメリカの三大ネットワークの一つを母体に持つからか、良い状態の録音が残っていることに感謝します。

ベートーヴェン・フェスティヴァル 1939 アルトゥーロ・トスカニーニ 、 NBC交響楽団

一聴するとなんかせかせかして雑に感じる部分があるかもしれません。でもその強く前進する迫力で高揚感を感ぜずにはいられない演奏です。

しかも、よく聴くと緩徐楽章や曲想によっては木管や内声部のカンタビーレが美しく、颯爽とした推進力の中に細やかなニュアンスも盛り込まれています。

全体的には、情のおぼれず、オーケストラをいっぱいに鳴らし、高い高揚感に導いてくれます。まさにフルトヴェングラーと両極にあるスタイルです。

最後に、トスカニーニには、49年から53年の晩年の全集があり、録音も含めそちらも素晴らしいですが、録音当時70代前半だったトスカニーニの活き活きとした躍動感溢れる当全集は、聴かずに死ねない名盤であることは間違いありません。



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