MTTを追悼して幻想交響曲を聴く、洗練の裏にある「凄み」

ベルリオーズ
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こんにちは、ともやんです。

アメリカの名指揮者であり、作曲家やピアニストとしてもマルチに活躍したマイケル・ティルソン・トーマス(MTT)氏が、4月22日に亡くなりました。

81歳でした。

写真などで拝見するティルソン・トーマス氏は、いつもイケメンで若々しい印象だったので、僕が思っていたよりも高齢だったことに驚いています。

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MTTの颯爽としたイメージを覆す幻想交響曲との出会い

実は僕、彼に対して「洗練されていて、明快で、颯爽とタクトを振る指揮者」という、勝手なイメージを持っていたんです。

ところが、彼がサンフランシスコ交響楽団を指揮したベルリオーズの『幻想交響曲』を聴いて、そのイメージがガラリと変わりました。

非常に彫りが深く、細部まで見事に描き切った演奏で、僕は思わず唸ってしまったほどです。

それに加えて、決して音楽が重苦しくならないのは流石の一言。
僕が以前から抱いていた「明快さとメリハリ」もしっかりと持ち合わせていました。

この素晴らしい演奏に触れ、僕は一気にマイケル・ティルソン・トーマス氏の魅力に引き込まれてしまったのです。

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タワーレコード・オンラインショップの解説より

この演奏の秘密を探るべく、タワーレコード・オンラインショップの英文解説を読んでみました。
とても興味深い内容だったので、分かりやすく丁寧な言葉にリライトしてご紹介しますね。

緻密なコントロールで描き出す、もうひとつの『幻想交響曲』

ロマン派の音楽において、マイケル・ティルソン・トーマスは長年にわたり、頼れる案内役として活躍してきました。
彼は、偉大な傑作たちが持つ「非常に複雑な仕組み」や「内側のつながり」を聴衆にハッキリと示しながら、常に楽曲全体を美しくまとめる演奏を続けてきたのです。
2007年、テレビシリーズ『Keeping Score』のためにサンフランシスコ交響楽団と共演した『幻想交響曲』のライブ演奏は、まさに「明快さと一貫性のお手本」といえる仕上がりです。
たとえ手元に番組のDVDがなくても、彼がこの奇想天外な交響曲の魅力を、会場の聴衆にもテレビの前の視聴者にも完璧に理解させたことが、音を聴くだけでありありと伝わってきます。
ただし、この「圧倒的な分かりやすさ」の裏には、ある特徴(トレードオフ)もあります。それは、音楽が持つ「感情的な熱量」のコントロールです。
ティルソン・トーマスは、この幻覚的で歪んだストーリーを持つ名曲に対して、驚くほど冷静で客観的な視点を持っています。
そのため、ベルリオーズが本来仕掛けたような、大げさな演技や暴力的な激しさはほとんど感じられません。
その代わりに聴こえてくるのは、理性によってコントロールされ、エネルギーとバランスが見事に調和した、いわば「ベートーヴェン的な古典主義」です。
終盤の2つの楽章(第4楽章・第5楽章)では多少の激しさも見られますが、ベルリオーズの描く「狂気じみた殺人鬼の情熱」や、「魔女の安息日」に期待されるような「灼熱の地獄の炎」のようなドロドロした熱さは、あえて抑えられています。
彼の演奏は、たとえばグスタボ・ドゥダメル氏のような熱狂的な演奏ほど刺激的ではありませんし、パーヴォ・ヤルヴィ氏のユニークな解釈ほど奇抜でもありません。
数ある録音の中でも、マルク・ミンコフスキー氏による古楽器を使ったスリリングな演奏とは対極にあり、むしろサー・コリン・デイヴィス氏のような「抑制の効いたスタイル」に近いと言えます。
したがって、この録音はベルリオーズの人気曲を「どこまでも明快に描き出した名演」として大いに称賛されるべきものですが、もしかしたら、一時のスリルや斬新さだけを求めるリスナーにとっては、少し上品に感じられるかもしれません。

MTTの幻想交響曲のCDと配信

MTTの幻想交響曲のCDとAmason Music Unlimitedでの配信をご案内します。

エクトル・ベルリオーズ – Hector Berlioz (1803-1869)
幻想交響曲 Op. 14
Symphonie fantastique, Op. 14

1.(15:45) I. Reveries: Largo – Passions: Allegro agitato e appassionato assai
2.(06:50) II. Un Bal (Valse): Allegro non troppo
3.(17:05) III. Scene aux Champs: Adagio
4.(06:38) IV. Marche au Supplice: Allegretto non troppo
5.(09:23) V. Songe d’une Nuit du Sabbat: Larghetto – Allegro
total(55:41)

サンフランシスコ交響楽団 – San Francisco Symphony Orchestra
マイケル・ティルソン・トーマス – Michael Tilson Thomas (指揮)

マイケル・ティルソン・トーマス 、サンフランシスコ交響楽団 ベルリオーズ: 幻想交響曲

マイケル・ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団/ベルリオーズ: 幻想交響曲

聴き終えて:彼が遺してくれたクラシックの遺産

タワーレコードの解説にある「理性でコントロールされたバランスの良さ」という指摘を読んで、僕が感じた「細部まで描き切る緻密さ」の理由が腑に落ちました。

ドロドロとした狂気に溺れるのではなく、スコア(楽譜)を徹底的に見つめ直し、明快に仕立て上げる。これこそが、MTTという稀代の音楽家がたどり着いた境地だったのかもしれません。

偉大な指揮者の冥福を祈りつつ、しばらくはこの『幻想交響曲』をじっくりと聴き込みたいと思います



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