こんにちは、ともやんです。
先日、タワーレコードのサイトを見ていたら8月にピリオド楽器によるマーラーの交響曲第5番のCDがリリースされるという記事を発見。
マーラーのピリオド楽器を使うのか!演奏は?指揮は?とチェックすると、
指揮がフィリップ・ファン・シュタインネッカーという人。
オケはマーラー・アカデミー管弦楽団とのこと。
まずは、ということで聴いてみました。
シュタインネッカーとムジカ・セクロルムのブルックナー
一聴して、これまでのブルックナー演奏に対して抱いてきた「重厚長大」「聖堂の響き」という固定観念を、鮮やかに覆す挑戦ではないか、と感じました。
自分自身、下手ながらもヴァイオリンを弾きますが、僕のレベルでは、音のクリアーさと豊かな響きを出すのはとっても難しいです、というかできない。
そんな自分の悩みの観点からも聴いていておもしろかったです。
ブルックナーの切り拓かれた新たな地平
2013年12月、ベートーヴェンの「第九」で新日本フィルと共演し、その才気あふれる指揮で日本の聴衆を魅了したドイツの逸材、フィリップ・フォン・シュタインエッカー。
近年、指揮者として、またチェリストとして目覚ましい成長を遂げている彼が、自身の理想を具現化するために創設したのが、南チロル・ボルツァーノを拠点とするピリオド・オーケストラ「ムジカ・セクロルム」です。
ヨーロッパの精鋭ピリオド・アンサンブルやマーラー室内管のメンバーを結集させたこのオーケストラで、彼が取り組んだブルックナーの「交響曲第1番」は、まさに現代のブルックナー演奏に一石を投じる驚くべき試みとなりました。
シュタインネッカー指揮でブルックナーの交響曲第1番を聴いて、ブルックナーの新たに切り拓かれた地平が見えたように感じました。
なぜ今、オリジナル楽器でブルックナーなのか?
多くのブルックナー演奏が、近代オーケストラの分厚い響きを前提とした「構築物」としての側面を強調するのに対し、シュタインネッカーのアプローチは決定的に異なります。
瑞々しくも露わなテクスチュア
当時の楽器、あるいは当時の奏法を再現したオリジナル楽器を用いることで、ブルックナーのスコアに刻まれた「細部」が驚くほどクリアに聴こえてくるように感じました。
モダン楽器のオーケストラでは埋もれがちな内声部の対位法的な動きが、ここでは鮮明に輪郭を浮かび上がらせます。
ブルックナーが本来意図したであろう、ウィーンの土壌に根ざした素朴かつ大胆な旋律の躍動が、濁りのない響きによって直接的に耳へ届いてきた、と僕には感じました。
管楽器と弦楽器の絶妙なバランス
ピリオド楽器と現代のモダン楽器の大きな違いは、響きの豊かさではないかと思います。
つまりピリオド楽器は、音が出てから響きがなくなるまで時間が早い。
しかし、それが逆に透明感として表われます。
だからブルックナーの初期交響曲において特徴的な、木管楽器の素朴な音色や、金管楽器の峻厳かつ鋭い響きが、ピリオド楽器の音響特性によって、異様なほどの透明感を生み出していると感じました。
これにより、教会の大聖堂で響かせるような過剰な残響に頼らずとも、音楽の内側から湧き上がるようなエネルギーを感じ取ることができます。
丁寧なアナリーゼが導く「第1番」の真価
シュタインネッカーは、チェリストとしてマーラー室内管やルツェルン祝祭管で研鑽を積み、さらにはイングリッシュ・バロック・ソロイスツやオルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティックで首席奏者を務めるなど、ピリオド奏法の神髄を知り尽くしています。
この豊かな経験に基づいた指揮は、単なる「古楽器の物珍しさ」ではないと思います。
緻密なアナリーゼ(分析)によってスコアを徹底的に紐解き、ブルックナーが若き日に抱いた実験的精神や、荒々しいまでの情熱を現代の聴衆に向けて再構築しているのではないかと考えました。
ブルックナー交響曲第1番のCD紹介
アントン・ブルックナー – Anton Bruckner (1824-1896)
交響曲第1番 ハ短調 WAB 101 (1877年リンツ稿・ノヴァーク版)
Symphony No. 1 in C Minor, WAB 101 (1877 Linz version, ed. L. Nowak)
1.(12:07) I. Allegro
2.(13:50) II. Adagio
3.(08:09) III. Scherzo: Schnell
4.(13:51) IV. Finale: Bewegt, feurig
total(47:57)
ムジカ・セクロルム – Musica Saeculorum
フィリップ・ファン・シュタインネッカー – Philipp von Steinaecker (指揮)
録音: March 2011, Kurhaus Meran
シュタイネッカー/ムジカ・セクロルム/ブルックナー: 交響曲第1番ハ短調 WAB.101(リンツ稿)
シュタインネッカー&ムジカ・セクロルム!
オリジナル楽器によるブルックナー交響曲第1番。
まとめ
フィリップ・ファン・シュタインネッカー指揮のムジカ・セクロルムによる演奏は、いわゆる「古楽様式」の枠に収まるような堅苦しさとは無縁です。
モダンとピリオド、両方の世界を股にかけて活躍してきたシュタインネッカーだからこそ可能な、極めて柔軟で血の通った音楽作り。
「ブルックナーはこうあるべき」という先入観や固定観念を脱ぎ捨てて耳を傾けると、そこには、これまでにないほど鮮明で、瑞々しいブルックナーの「交響曲第1番」の真の姿が広がっているように思います。
次は、シュタインネッカーの指揮でマーラーの交響曲第9番を聴いてみようと思います。
聴いたらまたレビューいたします。



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