メサイア 野村あらえびすの情熱ショルティ盤の意外な優しさ

ヘンデル
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こんにちは、
ともやんです。

クラシック音楽を愛する者にとって、ヘンデルの『メサイア』は特別な存在です。

僕自身、この曲が大好きで、これまで合唱団の一員として何度もその音の波に身を投じてきました。

「聴いて良し、歌って良し」。

これほどまでに魂が浄化される名曲は他にないのではないでしょうか。

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本郷から淀橋まで歩かせた「音」の力

かつて、昭和を代表する音楽評論家・野村あらえびす(野村胡堂)は、この『メサイア』をこよなく愛しました。

彼は若くして亡くなった長男の追悼として、東京大学の25番教室で学生たちに『メサイア』の全曲鑑賞会を開いたといいます。

当時はSPレコード18枚という膨大なボリューム。

しかし、その音楽が学生たちに与えた衝撃は、現代の私たちが想像する以上のものでした。

ある学生は、鑑賞後の興奮が冷めやらず、本郷の東大から淀橋(現在の新宿区北新宿あたり)の自宅まで、約8キロもの道のりを歩いて帰ったそうです。

時間にして2時間近く。

多感な若者の心をそこまで突き動かしたものは、単なる旋律の美しさだけでなく、あらえびすがレコードに託した祈りそのものだったのかもしれません。

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ショルティへの「偏見」が打ち砕かれた瞬間

さて、今回僕はゲオルグ・ショルティ指揮/シカゴ交響楽団による『メサイア』を聴きました。

実は聴き始める前、僕は心の中で「ショルティのメサイア……? 本当に大丈夫だろうか」と、失礼ながら少し身構えていました。

僕の中でのショルティのイメージは、どこか機械的で無機質、あるいは強靭すぎるというものだったからです。

しかし、CDプレイヤーの再生ボタンを押し、音楽が進むにつれて、その懸念は完全な「杞憂」であったと思い知らされました。

そこにあったのは、シカゴ交響楽団との完璧な信頼関係に基づいた、驚くほど優しさに満ちあふれた演奏だったのです。

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キリ・テ・カナワ:心の奥底に届く「天上の声」

この盤を語る上で、ソプラノのキリ・テ・カナワの存在を欠かすことはできません。

彼女の歌声が響いた瞬間、空気が変わりました。その気品に満ちた美声は、耳を通り越して心の最深部へとダイレクトに届き、不覚にも涙がこぼれそうになりました。

僕の中で、『メサイア』のソプラノといえば、クリストファー・ホグウッド盤でのエマ・カークビーの清冽な歌唱がひとつの理想でした。

しかし、このキリ・テ・カナワの包容力ある歌唱に触れ、今や彼女たちは僕の中で「双璧」を成す存在となりました。

デイム・キリ・テ・カナワ(Dame Kiri Te Kanawa)
1944年ニュージーランド生まれ。1971年のコヴェント・ガーデンでの成功以来、世界最高のプリマドンナとして君臨。1982年にはその功績から「デイム」の称号を授与されています。

ショルティのヘンデル「メサイア」

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル – George Frideric Handel (1685-1759)
オラトリオ「メサイア」 HWV 56 (編曲:J. トービン)
Messiah, HWV 56 (arr. J. Tobin)

作詞 : 新約聖書 – Bible – New Testament
編曲 : ジョン・トービン – John Tobin

キリ・テ・カナワ – Kiri Te Kanawa (ソプラノ)
アンネ・イェヴァング – Anne Gjevang (アルト)
キース・ルイス – Keith Lewis (テノール)
グウィン・ハウエル – Gwynne Howell (バス)
アドルフ・ハーセス – Adolph Herseth (トランペット)
シカゴ交響合唱団 – Chicago Symphony Chorus
シカゴ交響楽団 – Chicago Symphony Orchestra
ゲオルク・ショルティ – Georg Solti (指揮)
録音: October 1984, Orchestra Hall, Chicago, United States
演奏時間(140:38)

ゲオルグ・ショルティ 、シカゴ交響楽団 ヘンデル:オラトリオ≪メサイア≫

かの有名な「ハレルヤ・コーラス」を含む《メサイア》は、バロック音楽の大家ヘンデルの代表作にして、”耳馴染みの良い”宗教音楽の筆頭格ともいえる名曲。
引き締まった造型で驚くほど完璧な演奏を聴かせる大指揮者ショルティと世界最高機能を誇ったシカゴ交響楽団、そして実力派スター揃いの声楽陣が、細部まで美しく精緻に表現し、作品の魅力を余すところなく伝えてくれます。
ユニバーサル・ミュージック

まとめ

ショルティの緻密なタクトと、キリ・テ・カナワの慈愛に満ちた歌唱。
この録音は、彼女の名唱を堪能するためだけでも、一生に一度は聴く価値がある名演だと断言できます。

かつての学生が8キロの道を歩いたように、僕もまた、この演奏を聴き終えたあと、しばらくはその場から動けないほどの余韻に浸っていました。



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