ヨーゼフ・クリップス・エディションでウィーンの真髄を辿る

クリップス
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こんにちは、
ともやんです。

20世紀を代表する指揮者であり、「生粋のウィーンっ子」として愛されたヨーゼフ・クリップス(1902-1974)。

彼が遺したデッカおよびフィリップスへの録音を集大成したこのエディションは、ウィーン伝統の演奏を現代に伝える一級の資料です。

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ヨーゼフ・クリップス・エディションについて

ウィーンの伝統的な演奏様式を継承していた数少ない指揮者の一人、ヨーゼフ・クリップスの録音が2巻のボックス・セットにまとめられました。

第1巻が、1947年から55年の間に録音されたデッカ・アルバムを集めたもので、モノラル録音が中心です。

第2巻が、1955年から73年の間にデッカとフィリップスに行われた録音を集めたもので、ステレオ録音が中心です。

DECCAでの初CD化や世界初CD化も含まれる貴重なボックスセットです。

Volume 1:1947-1955(CD22枚組)

~モノラル期の黄金時代と「ffrr」サウンドの融合~

第1巻は、戦後直後の1947年から1955年にかけてのモノラル録音を中心としたセットです。

クリップスがロンドン交響楽団の首席指揮者を務めていた時期(1950-54)とも重なり、録音地(ロンドン、ウィーン、アムステルダム)ごとに整理されています。

モーツァルトへの献身: クリップスが「すべての演奏はモーツァルトのようであるべきだ」と語った通り、その端正な造形美は絶品です。
SP時代の交響曲や協奏曲が最新のトランスファーで蘇っています。

歴史的録音: ウィーン国立歌劇場の面々による『後宮からの誘拐』世界初全曲録音や、少年合唱を起用した先駆的な『レクイエム』は必聴です。

豪華なソリスト陣: クリフォード・カーゾン(ピアノ)、ミーシャ・エルマン(ヴァイオリン)、ザラ・ネルソヴァ(チェロ)といった巨匠たちとの共演が、デッカが誇る高音質「ffrr」技術で鮮明に記録されています。

ヨーゼフ・クリップス・エディション Volume 1: 1947-1955

Volume 2: 1955-1973(CD21枚組)

~ステレオ期の円熟と伝説のオペラ録音~

第2巻は、1955年から晩年の1973年に至るまでのステレオ録音を網羅しています。ウィーンの伝統が最高の録音技術と幸福な結婚を遂げた時代の記録です。

不滅の名盤『ドン・ジョヴァンニ』: 1955年、ステレオ録音初期に刻まれたこの演奏は、現在でも同曲の決定盤の一つに数えられるクリップスの代表作です。

晩年のモーツァルト選集: フィリップス・レーベルにロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と録音した交響曲集を収録。
第33番のリハーサル風景も含まれており、彼の緻密な音楽作りの舞台裏を垣間見ることができます。

貴重なライヴと未発表音源: ヴンダーリヒとフィッシャー=ディースカウという黄金のペアによるマーラー『大地の歌』(ライヴ)、そして初公開となるウェーバー『オベロン』序曲など、コレクター垂涎の音源が揃っています。

ヨーゼフ・クリップス・エディション/Volume 2: 1955-1973

ヨーゼフ・クリップスの芸術的特徴

クリップスの指揮には、無理な誇張や刺々しさが一切ありません。
彼はフェリックス・ワインガルトナーの系譜を継ぎ、「自然な流動性」と「歌うような旋律線」を重んじました。

「すべてがモーツァルトによるものであるかのように聞こえなければなりません。そうしないとよくない演奏になってしまいます」

この言葉に象徴されるように、ベートーヴェンやブラームス、あるいはマーラーであっても、クリップスの手にかかれば、どこか優雅で、それでいて構造の明晰な響きが立ち上がります

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クリップスの視聴記

エディションの第1巻と第2巻からいくつか録音を聴いてみました。
ウィーン・フィルとのブラームス交響曲第1番とモーツァルトの交響曲第39番で、ロンドン響との51年録音とコンセルトヘボウ管との72年の録音を聴き比べました。

そして生粋のウィーン生まれのクリップス指揮でウィンナーワルツの独特な「タメ」やリズム感を感じてみました。

ウィーンフィルとのブラームス1番

ヨハネス・ブラームス – Johannes Brahms (1833-1897)
交響曲第1番 ハ短調 Op. 68
Symphony No. 1 in C Minor, Op. 68

1.(12:43) I. Un poco sostenuto – Allegro
2.(09:26) II. Andante sostenuto
3.(04:50) III. Un poco allegretto e grazioso
4.(15:57) IV. Adagio – Piu andante – Allegro non troppo ma con brio
total(42:56)

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 – Vienna Philharmonic Orchestra
ヨーゼフ・クリップス – Josef Krips (指揮)
[録音]1956年10月

ヨーゼフ・クリップス・エディション/Volume 2: 1955-1973
↑ ↑ ↑
こちらに収録されています。

録音記録を見ると、1955年から58年に掛けて、ウィーン・フィルとの録音がいくつか残されています。
それらは、特にハイドンの交響曲第94番「驚愕」や第99番、チャイコフスキーの交響曲第5番のように録音されてから70年も経つ現代でも名盤とされている名演です。

そんな中で、あまり注目されていると思われない、ブラームスの交響曲第1番を聴きました。
1956年10月の録音ですから、まさに70年前の録音です。
録音自体は素晴らしく、今聴いても古さを感じません。

またウィーン・フィルの特に弦の艶やかで潤いのある音質は聴いていてうっとりします。
ブラームスの交響曲第1番というとベートーヴェンを意識しまくって構想から20年以上掛けて完成した力作。
ブラームスの4つの交響曲の中でももっとも硬派な作品です。
コンサートでもダイナミックな演奏で会場を沸かせることもできる作品。

しかし、クリップスは、第1楽章からゆったり目のテンポを保ち、悠々と泰然と進めていきます。
そこにウィーン・フィルの潤いある響きが絡まって、得も言えぬ熟成されて音楽が醸し出されてきます。
終楽章の盛り上がるところもむしろ素っ気なく淡々と進むので、いや、もっと劇的でもいいじゃない?と思わないでもありません。
しかし、聴き終わったあとの満足感は十分で、ああ良い音楽を聴いたなと幸せな気持ちになりました。

モーツァルト解釈の深化

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト – Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
交響曲第39番 変ホ長調 K. 543
Symphony No. 39 in E-Flat Major, K. 543

1.(08:58) I. Adagio – Allegro
2.(08:24) II. Andante con moto
3.(04:15) III. Menuetto: Allegretto
4.(04:13) IV. Finale: Allegro
total(25:50)

ロンドン交響楽団 – London Symphony Orchestra
ヨーゼフ・クリップス – Josef Krips (指揮)
録音:1951年12月

ヨーゼフ・クリップス・エディション Volume 1: 1947-1955
↑ ↑ ↑
こちらに収録されています。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト – Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
交響曲第39番 変ホ長調 K. 543
Symphony No. 39 in E-Flat Major, K. 543

1.(08:58) I. Adagio – Allegro
2.(08:13) II. Andante con moto
3.(04:19) III. Menuetto: Allegretto
4.(04:15) IV. Finale: Allegro
toal(25:45)

コンセルトヘボウ管弦楽団 – Concertgebouw Orchestra
ヨーゼフ・クリップス – Josef Krips (指揮)
[録音]1972年6月

ヨーゼフ・クリップス・エディション/Volume 2: 1955-1973
↑ ↑ ↑
こちらに収録されています。

前出のように、クリップスは、モーツァルトをもっとも得意としていて、他の作曲家もモーツァルトの様に演奏しようとした指揮者です。

それだけにモーツァルトの演奏に対し造詣が深い厳しくもあると思います。
僕ごときが、そんなクリップスのモーツァルト演奏を論じようなんて100年早いですが、交響曲第39番に関して、51年のロンドン響と72年のコンセルトヘボウ管との印象の違いを記したいと思います。

まず驚くべきは、演奏時間がほぼ同じ。
つまり51年、クリップス49歳の時には、その演奏様式はほぼ完成されていたと思われます。

やはり一番大きな違いは、録音とオーケストラだと思いました。
51年は当然モノラル録音で、各楽器の分離や細部がどうしても不明瞭に感じます。
その点72年方が、そんな不明瞭さが解消されています。

オーケストラに関しても録音のせいが大きいと思いますが、コンセルトヘボウ管の方が、響きに厚みがあります。

ただ、終楽章に関しては、弦の煌めきやメリハリ感は、ロンドン響はなかなかです。
つまり結論は、新旧両方を楽しむのが一番ということですね。

ウィーンの気風を感じるワルツ

ヨハン・シュトラウスII世 – Johann Strauss II (1825-1899)
ワルツ「美しく青きドナウ」 Op. 314
1.(08:47) An der schonen blauen Donau, Walzer, Op. 314

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ワルツ「加速」 Op. 234
2.(08:41) Accellerationen (Acceleration), Waltz, Op. 234

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皇帝円舞曲 Op. 437
3.(09:58) Kaiser-Walzer (Emperor Waltz), Op. 437

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ワルツ「南国のバラ」 Op. 388
4.(08:00) Rosen aus dem Suden, Op. 388

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新ピッツィカート・ポルカ Op. 449
5.(02:45) Neue Pizzicato-Polka, Op. 449

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ワルツ「春の声」 Op. 410
6.(06:05) Fruhlingsstimmen (Voices of Spring), Op. 410
作詞 : リヒャルト・ジュネー – Richard Genee
ヒルデ・ギューデン – Hilde Gueden (ソプラノ)

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ヨーゼフ・シュトラウス – Josef Strauss (1827-1870)
オーストリアの村つばめ Op. 164
7.(05:39) Dorfschwalben aus Oesterreich, Op. 164
作詞 : 不詳 – Anonymous
ヒルデ・ギューデン – Hilde Gueden (ソプラノ)

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 – Vienna Philharmonic Orchestra
ヨーゼフ・クリップス – Josef Krips (指揮)

ヨーゼフ・クリップス・エディション/Volume 2: 1955-1973
↑ ↑ ↑
こちらに収録されています。

さてクリップス&ウィーン・フィルの演奏録音を聴いてから、ムーティが同じウィーン・フィルを指揮した録音を聴いてみました。
演奏時間が、クリップスが8:47、ムーティが10:10。
ムーティの方が遅めなのかと思ったのですが、クリップスが、わりと素朴にさりげなく進めていくの対し、ムーティには過剰な演出が感じられました。
つまり前奏に続いて主部に入ると極端にテンポを落として、持って回ったような演奏をしています。
やはりこれはイタリア歌劇の巨匠的な演出でしょうか。

印象的にはクリップスは、野外音楽祭で聴く庶民的な演奏に対して、ムーティは、近代的なコンサートホールで聴く、豪華な演奏という感じです。
むしろ各国の首脳たちに聴かせるときにはいいかもですね。

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最後に

クリップスの音楽は、派手さこそありませんが、聴き終えたあとに心の安らぎと深い充足感を与えてくれます

僕は、アマチュアのオーケストラや合唱団のコンサートを聴きに行くのが好きです。
ひとつはチケット代は安価なのと、音楽が好きで、他の仕事や家事などをしながら、自分たちで団費を払いながら活動している人たちの心意気が聴かれるからです。

技術的には、当然プロには敵いませんが、そこそこレベルの高い団体もあります。

そんなコンサートに行くと、演奏者の家族や友人たちが大勢聴きに来ています。
いやむしろそんな人たちばかりです。
そしてコンサートが終わったら、演者も観客もお互いに良かった、良かったと喜び合います。

クリップスの演奏を聴いていると、音楽を聴くという素朴な喜びや幸せがふつふつと湧いてくるんですね。



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