NHK-FMのクラシック音楽で「名曲のたのしみ」という番組がありました。
調べると1971年4月11日から2012年12月30日まで40年以上続いた長寿番組です。
そのパーソナリティーを務めたのが評論家の吉田秀和氏でした。
吉田氏は、2012年7月に98歳の高齢で亡くなっています。
つまり吉田氏の死と共に番組が終了したということです。
吉田氏が亡くなった後も数ヵ月番組が続いていますが、
これは録音されていたものを流したようです。
バックハウス 吉田秀和とNHK-FM放送
1971年4月というと僕が中学2年生。
クラシック音楽を聴き始めた頃です。
当時のLPレコードは、物価に比べ相当高価なもので、
中学生のお小遣いでなかなか買えるものではありませんでした。
そこで、よくFM放送を聴いたものです。
だから僕はこのNHK-FMの「名曲のたのしみ」も良く聴きました。
しかも吉田秀和氏の飄々とした語り口が好きでした。
当時吉田氏は、50代後半だったので中学生の僕は、
面白いお爺さんのお話を聞くという感じでした。
実は、その後多分2010年頃にこの番組を偶然聴く機会があって吉田氏がまだトークしているのを聴いて、驚いたものです。
一瞬、録音?と思ったくらいで、当時吉田氏は、90代も後半になろうかという時でした。
変わらず飄々とした語り口で嬉しく思ったものです。
バックハウス ピアノ演奏一筋に生きた
さて、前置きが長くなりました。
僕がなぜ吉田氏の話をしたかというと、
吉田氏のバックハウスという発音が好きだったからです。
アクセントをバに置くのです。
ドイツにも滞在され、奥さんもドイツ人だったことから
吉田氏の発音が正しいのでしょう。
つまりそれだけ印象に残っているというとは、
吉田氏は、バックハウスの演奏をよく紹介していたのだと思います。
1971年と言えば、バックハウスが亡くなって間もないころです。
バックハウスは、1884年生まれで1969年に85歳で他界しています。
フルトヴェングラー、クレンペラー、クナッパーツブッシュと同世代で、
まさに激動の時代を生きた人です。
1969年のコンサートの最中に心臓発作を起こし、帰らぬ人となりました。
まさにピアノ演奏一筋に生きた人です。
僕は、ベートーヴェンのピアノソナタを聴くときはいつもバックハウスの演奏です。
デッカに残したベートーヴェンのピアノソナタ全集は人類の宝、世界遺産だと思います。
バックハウス ベートーヴェン ピアノソナタ全集
『ヴィルヘルム・バックハウス/デッカ・ベートーヴェン・ソナタ・レコーディングス』
【曲目】
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ全曲 (全32曲)
※2回目の録音
【演奏】
ヴィルヘルム・バックハウス(Pf)
【録音】
1952年(29番)、1958年~1969年
『ヴィルヘルム・バックハウス/デッカ・ベートーヴェン・ソナタ・レコーディングス』
巨匠バックハウス(1884~1969)がデッカに録音した、2回目のステレオ録音によるベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集(29番のみ1952年のモノラル録音を流用)!
今もなお、同全集の代表的名盤として色褪せることのない、重厚で堂々たる風格を保った名盤です。
最後に
僕はバックハウスの演奏を聴くといつも朝比奈隆のベートーヴェン演奏と重なります。
二人とも小細工せずに誠心誠意を尽くしてベートーヴェンと
真正面に向き合い、愚直に演奏されます。
その演奏は決して洗練されたものではなく、武骨故に一聴ぶっきらぼうに聴こえなくもありません。
でも一旦その魅力が分かると一生の宝物になります。
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