こんにちは、
ともやんです。
1月31日(土)、ユニコーン・シンフォニー・オーケストラ(USO)の公演を聴いてきました。
会場は日吉にある慶應義塾大学構内の藤原洋記念ホール。
収容人数はおよそ500席ほどの比較的コンパクトなホールですが、音響はとても良く、木の温もりを感じさせる落ち着いた空間です。

※ロビーからは、慶応大のグラウンドが望めます。子供たちが幼い頃、芝の観客席で走り回って遊んだものです。懐かしい^^
大学のキャンパス内に、これほど本格的で美しいホールがあることに、改めて感心させられました。
ユニコーン・シンフォニー・オケについて
USOは2010年、慶應義塾中等部の出身者を中心に結成されたアマチュア・オーケストラです。
今回ご招待くださった方がそのメンバーで、初めて聴いたのは2年ほど前になります。
その時、アマチュアとは思えない完成度の高さに驚き、同時に音楽への真摯な向き合い方に深く感動しました。
それ以来、年2回行われる定期公演には、ほぼ欠かさず足を運ぶようになっています。
若き指揮者米田覚士
今回のプログラムは、山田耕筰の序曲、シューベルトの交響曲第2番、そしてブラームスのセレナード第1番という、なかなか渋く、通好みの選曲でした。
しかし指揮台に立ったのは、2025年にブランソン国際指揮者コンクールで優勝した若手指揮者・米田覚士さん。
この指揮者とUSOの組み合わせなら、きっと面白い演奏が聴けるに違いない、という期待を胸に開演を待ちました。
米田さんは20代で、まだ童顔の印象が残る若い指揮者ですが、ひとたびタクトを振り始めると、その印象は一変します。
動きに無駄がなく、音楽の流れを的確に捉えた切れのある指揮ぶりで、オーケストラをしっかりとドライブしていきます。これからどのように成長していくのか、とても楽しみな存在です。
弦楽器奏者に目を奪われ
オーケストラの団員は20代から30代が中心で、特に弦楽器には女性奏者が多いのが印象的でした。
しなやかな弓さばきから生まれる柔らかな音色、そして演奏に集中する姿の美しさに、つい音楽と同時に視線も奪われてしまいます。
ここからは、簡単にプログラムを振り返ってみたいと思います。
今回のプログラム紹介
今回のプログラムは、渋いというか、地味というか、通好みというか、面白い選曲でした。

※コンサートのチラシ
しいて言えば、日本最初の管弦楽曲を作曲した20代の山田耕筰とシューベルト、ブラームスの若き日の佳作という括りでしょうか。
演奏者も若者中心のオーケストラに若き将来のマエストロによる演奏でした。
山田耕筰:序曲ニ長調
最初に演奏されたのは、山田耕筰の《序曲 ニ長調》。
この作品は1912年(大正元年)に作曲され、日本人による最初期の本格的な管弦楽曲として知られています。
山田耕筰というと、《赤とんぼ》《この道》などの唱歌・童謡の作曲家としてのイメージが強く、その名前は広く国民に親しまれていますが、日本に西洋音楽文化を根づかせた先駆者としての功績については、意外と知られていないのではないでしょうか。
この序曲を聴くと、そうしたイメージを良い意味で裏切られます。
堂々とした構成と厚みのある響きに、当時の作曲家の気概と自信が感じられ、思わず圧倒されました。
シューベルト交響曲第2番
続いて演奏されたのは、シューベルトの交響曲第2番。
シューベルトは31年という短い生涯の中で、8曲の交響曲を残しましたが、この第2番は1815年、わずか18歳の時に完成された作品です。
僕はシューベルトを音楽史上最高の天才の一人だと思っていますが、とりわけ驚異的なのがこの1815年の創作量です。
この年だけで交響曲2曲、オペラ3曲、ピアノ曲およそ40曲、そして138曲ものリートが書かれています。「魔王」や「野ばら」といった名歌曲も、すべてこの年の作品です。
交響曲第2番は、若々しいエネルギーと古典的な均整美が同居した作品で、USOの溌剌とした演奏ととても相性が良く、聴いていて自然と頬が緩みました。
ブラームス:セレナード第1番
メインプログラムは、ブラームスのセレナード第1番。
ブラームスは1856年から約3年間、秋から冬にかけてドイツ北西部の小都市デトモルトで生活していました。この地で彼は、クララ・シューマンの推薦を受け、ピアノ教師や合唱団指導者として職を得ます。
その傍ら、宮廷オーケストラの奏者たちと交流し、ハイドンやモーツァルトのセレナード、ディヴェルティメントなどを実際に演奏することで、管弦楽の音色や奏法についての理解を深めていきました。
そうした経験の結実が、このセレナード第1番です。
もっとも慎重な性格のブラームスらしく、当初は九重奏の室内楽として構想されましたが、後に2管編成の管弦楽曲へと発展しました。
聴いていると、「このまま交響曲にしても良かったのでは」と素直に感じてしまうほど充実した内容ですが、そこはやはりベートーヴェンの存在を強く意識していたブラームス。
交響曲というジャンルに踏み出す前の、管弦楽による実践と試行錯誤の場でもあったのでしょう。
実際、約20年後に完成する交響曲第1番には、この時期の着想が少なからず生かされていると言われています。
演奏を聴きながら、ブラームスが一歩一歩、慎重に自らの道を切り拓いていった姿が目に浮かぶようでした。
おすすめCD紹介
今回のプログラムで取り上げられた作品のCDを紹介します。
山田耕筰:序曲ニ長調
序曲ニ長調は、世界初録音だそうです。
一緒に収録されている交響曲ヘ長調「かちどきと平和」も重厚で素晴らしい作品で、山田耕筰氏の実力を改めて知りました。
山田耕筰 – Kosaku Yamada (1886-1965)
序曲 ニ長調
1.Overture in D Major
total(03:32)
ニュージーランド交響楽団 – New Zealand Symphony Orchestra
湯浅卓雄 – Takuo Yuasa (指揮)
苦労を重ねた少年時代を経て、東京音楽学校に入学し良き師と後援者に恵まれた彼は1910年にベルリンに留学、ベルリン王立芸術アカデミー作曲科でブルッフに師事します。
ここで西洋音楽のオーケストレーションや対位法などを徹底的に学び、日本人による初めての管弦楽曲「序曲 ニ長調」を作曲しました。
その8か月後にはやはり日本人初の交響曲「かちどきと平和」を作曲。
勝利への喜ばしい讃歌と平和への静かな祈りを対照させ、宥和させたこの曲は、山田が幼い頃に横須賀で刷り込まれた「元気な軍楽と敬虔な賛美歌」という対になる音楽の記憶の発展でもあります。
その翌年に書かれた、更に意欲的な作風を持つ2曲の交響詩も収録。夢と希望に溢れて渡欧した若き日の山田耕筰が、海外留学で身につけた様々な作曲技法を駆使し、その類い稀なる音楽的才能を存分に発揮した作品群は聴き応え充分です。
シューベルト:交響曲第2番
フランツ・シューベルト – Franz Schubert (1797-1828)
交響曲第2番 変ロ長調 D. 125
Symphony No. 2 in B-Flat Major, D. 125
1.(13:58) I. Largo – Allegro vivace
2.(08:27) II. Andante
3.(03:10) III. Menuetto: Allegro vivace
4.(05:36) IV. Presto vivace
total(31:11)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 – Vienna Philharmonic Orchestra
イシュトヴァン・ケルテス – Istvan Kertesz (指揮)
録音: October 1971, Sofiensaal, Vienna, Austria
本国オリジナル・マスターより新規復刻。名盤かつ優秀録音。
当時DECCAではほぼ同時期にミュンヒンガーとのシューベルト録音も進められており(交響曲全集としては未完)、同じオケで曲目が重なることは珍しいと言えますが、それでもDECCAは最終的にはケルテスと全集を制作したいということだったのでしょう。
61年の「新世界」のセッションからスタートした両者は、モーツァルトの交響曲第33,39番を翌年収録した後、第3作目としてまずは「未完成」と序曲3曲を63年10月に録音しました。
翌月には「グレイト」を録音した後、暫くシューベルトは途絶え、その後全集制作の企画となったのか70年と71年に残りの6曲が収録されていますので、年代的には少し離れています。
73年にケルテスが急逝したため、結果として両者の共演盤はそれほど多くありませんが、それらの中でもこのシューベルトはまとまった音源として貴重であり、尚且つモーツァルトとブラームスに並ぶ名演です。
録音面でも往年のウィーン・フィルのサウンドがDECCAの優秀録音により良く捉えられています。
演奏面でも、自然体とも言えるケルテスの流れるような指揮は瑞々しい音楽的感性に溢れており、数多いシューベルト盤の中でも出色と言える出来です。
今回の復刻ではCD再発以降、それほど頻繁にリマスターされていなかった音源を、オリジナルのアナログ・マスターテープまで遡り、2017年最新の高品位デジタル化(192kHz/24bit)によるマスタリングを経て復刻いたします。
ブックレットは単売時のジャケット・デザインも一部カラーで印刷し、解説書には新規で序文解説を掲載しました。尚、今回の復刻では、第2弾として全5作を発売いたします。
タワーレコードオンラインショップより
ブラームス:セレナード第1番
ヨハネス・ブラームス – Johannes Brahms (1833-1897)
セレナード第1番 ニ長調 Op. 11
Serenade No. 1 in D Major, Op. 11
1.(13:21) I. Allegro molto
2.(08:33) II. Scherzo: Allegro non troppo
3.(11:04) III. Adagio non troppo
4.(04:24) IV. Menuetto I-II
5.(03:07) V. Scherzo: Allegro
6.(05:54) VI. Rondo: Allegro
total(46:23)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 – Leipzig Gewandhaus Orchestra
クルト・マズア – Kurt Masur (指揮)
マズア/ゲヴァントハウス管/ブラームス: 交響曲・管弦楽曲全集<限定盤>
1977年から1981年に東独ETERNAとフィリップスに行われたブラームス録音がCD8枚組のセットとしてまとめられたものです。
協奏曲ではサルヴァトーレ・アッカルド(ヴァイオリン)、ハインリヒ・シフ(チェロ)、アメリカのミシャ・ディヒター(ピアノ)が共演しています。限定盤。オリジナル・ジャケット仕様。
タワーレコードオンラインショップより
最後に
次回のUSO定期演奏会は、7月25日(土)、横浜みなとみらいホールで開催されます。
演目は、なんとマーラーの交響曲第2番《復活》。
指揮は今回と同じく米田覚士さんです。
この大曲を、若き指揮者とエネルギッシュなオーケストラがどのように響かせてくれるのか。
今から期待せずにはいられません。



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