こんにちは、
ともやんです。
2026年5月後半から、アマチュアオーケストラの海外ツアーに、合唱団の一員として同行することになりました。
音楽を続けてきて本当によかったな、としみじみ感じる出来事です。
行き先はオーストリアのザルツブルクと、ドイツのライプツィヒ。
どちらも音楽好きには特別な響きを持つ街です。
今回は、ザルツブルク公演の演目であるモーツァルトのレクイエムに関する記事を書きました。
モーツァルトのレクイエムを歌うこと
ザルツブルクではモーツァルトの《レクイエム》を、そしてライプツィヒではJ.S.バッハの《ロ短調ミサ》を歌います。
モーツァルトが生まれた街でそのレクイエムを歌い、バッハが実際に活動していた街でロ短調ミサを歌う─こうして文字にしてみても、なかなか現実感がありません。
合唱団の一員としてその場に立てること自体、ありがたいことだと感じています。
24年ぶりのモーツァルト
ロ短調ミサについては、昨年の10月と11月に、別の合唱団の公演で歌いました。
比較的最近のことなので、音楽の流れや感触はまだ体に残っています。
あの大曲を歌い切ったときの充実感は、今思い出しても特別なものでした。
一方、モーツァルトのレクイエムはというと、最後に歌ったのが2002年。
今から約24年も前になります。
さすがに細かいところはほとんど忘れていて、楽譜を開くと「こんな音だったかな」と思う箇所も少なくありません。
そこで現在、ツアーに参加する合唱メンバーを集めて行われている練習会に、できるだけ足を運ぶようにしています。
カラヤンの三度の録音について
また、作品を体に染み込ませるために、これも練習の一環と思って、毎日モーツァルトのレクイエムを聴いています。
名曲だけあって、CDの録音も本当にたくさんあります。
指揮者やオーケストラによって、同じ曲とは思えないほど印象が変わるのが、この作品の奥深さでしょう。
その中で、今回あらためて取り上げたいと思ったのが、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮の録音です。
カラヤンはモーツァルトと同じザルツブルクの出身で、このレクイエムを60年代、70年代、80年代と、三度にわたって録音しています。
最後の録音は1986年、カラヤン78歳のときのものです。
最初の二つはベルリン・フィルとの演奏ですが、この最後の録音はウィーン・フィルとの共演になります。
そして、この演奏が実にいいのです。
カラヤン最後の録音がいい
60年代や70年代の録音は、死者を悼むレクイエムでありながら、どこか豪華で、音の輝きが強く印象に残りました。
それはいかにもカラヤンらしい演奏だと思います。
しかし、この86年の録音では、そうした華やかさよりも、淡々とした進行の中に、深い祈りのようなものが感じられます。
聴いていると、音楽が前に出てくるというより、静かに寄り添ってくるような感覚があります。
カラヤンのCD紹介
カラヤンは、モーツァルトのレクイエムの正規のスタジオ録音は次の3つがあります。
1961年10月、ベルリン・フィル他
1975年9月、ベルリン・フィル他
1986年6月、ウィーン・フィル他
61年の録音が、一番重く暗く重厚な印象を受けます。
75年は、豪奢な印象で、個人的には86年のものが一番好きです。
前の二つの録音に比べ、何か達観したような軽さと枯れた印象を受け取り、カラヤンも老境に入ったのかなと感じました。
この録音の約3年後に亡くなるわけですが、81歳という年齢は、まだまだ出来たのではと感じないわけではありません。
ベルリン・フィルと1961年
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト – Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
レクイエム ニ短調 K. 626 (F.X. ジュースマイヤーによる補筆完成版)
Requiem in D Minor, K. 626 (completed F.X. Sussmayr)
演奏時間53:37
作詞 : ミサ典礼文 – Mass Text
編曲 : フランツ・クサヴァー・ジュースマイヤー – Franz Xaver Sussmayr
ウィルマ・リップ – Wilma Lipp (ソプラノ)
ヒルデ・レッセル=マイダン – Hilde Rossel-Majdan (コントラルト)
アントン・デルモータ – Anton Dermota (テノール)
ウォルター・ベリー – Walter Berry (バス・バリトン)
ヴォルフガング・マイヤー – Wolfgang Meyer (オルガン)
ウィーン楽友協会合唱団 – Wiener Singverein
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – Berlin Philharmonic Orchestra
ヘルベルト・フォン・カラヤン – Herbert von Karajan (指揮)
宗教的傑作の録音が復刻!
モーツァルトのレクイエムは、カラヤンによるこの作品の最初の録音で、DGカタログに掲載されてはいますが、久しぶりの復刻となります。
タワーレコードオンラインショップより
ベルリン・フィルと1975年
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト – Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
レクイエム ニ短調 K. 626
Requiem in D Minor, K. 626
演奏時間52:50
作詞 : ミサ典礼文 – Mass Text
アンナ・トモワ=シントウ – Anna Tomowa-Sintow (ソプラノ)
アグネス・バルツァ – Agnes Baltsa (メゾ・ソプラノ)
ヴェルナー・クレン – Werner Krenn (テノール)
ジョゼ・ヴァン・ダム – Jose Van Dam (バリトン)
ルドルフ・ショルツ – Rudolf Scholz (オルガン)
ウィーン楽友協会合唱団 – Wiener Singverein
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – Berlin Philharmonic Orchestra
ヘルベルト・フォン・カラヤン – Herbert von Karajan (指揮)
録音:1975年9月27、28日 ベルリン、フィルハーモニー
DSDマスタリングによって甦る歌手・合唱の生々しさにもご注目ください。
タワーレコードオンラインショップより
ウィーン・フィルと1986年
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト – Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
レクイエム ニ短調 K. 626
Requiem in D Minor, K. 626
演奏時間52:12
作詞 : ミサ典礼文 – Mass Text
アンナ・トモワ=シントウ – Anna Tomowa-Sintow (ソプラノ)
エルガ・ミュラー=モリナーリ – Helga Muller-Molinari (コントラルト)
ヴィンソン・コール – Vinson Cole (テノール)
パータ・ブルチェラーゼ – Paata Burchuladze (バス)
ウィーン楽友協会合唱団 – Wiener Singverein
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 – Vienna Philharmonic Orchestra
ヘルベルト・フォン・カラヤン – Herbert von Karajan (指揮)
録音: June 1986, Grosser Saal, Musikverein, Wien, Austria
タワーレコードオンラインショップより
カラヤンのライブ録音1960年
カラヤンのモーツァルトのレクイエムの録音は、3つあるとお伝えしていますが、それは正規のスタジオ録音のことです。
実は最初のスタジオ録音の1年前の1960年8月24日のザルツブルクで行われた公演のライブ録音があります。
ザルツブルク音楽祭のものだと思います。
オーケストラはウィーン・フィルで、レオンタイン・プライス(ソプラノ)
ヒルデ・レッスル=マイダン(アルト)フリッツ・ヴンダーリヒ(テノール)ヴァルター・ベリー(バス)というそうそうたるソリストが揃っています。
カラヤンの指揮もゆったりと落ち着いたテンポで、優美なウィーン・フィルの響きとソリストたちの厚みのある声量で、現代の古楽器スタイルとは一線を画した懐かしき演奏です。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト – Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
レクイエム ニ短調 K. 626
Requiem in D Minor, K. 626
演奏時間54:58
作詞 : ミサ典礼文 – Mass Text
レオンタイン・プライス – Leontyne Price (ソプラノ)
ヒルデ・レッセル=マイダン – Hilde Rossel-Majdan (アルト)
フリッツ・ヴンダーリヒ – Fritz Wunderlich (テノール)
ウォルター・ベリー – Walter Berry (バス)
エベルハルト・ヴェヒター – Eberhard Wachter (バリトン)
ウィーン楽友協会合唱団 – Wiener Singverein
フランツ・ザウアー – Franz Sauer (オルガン)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 – Vienna Philharmonic Orchestra
ヘルベルト・フォン・カラヤン – Herbert von Karajan (指揮)
録音: 24 August 1960, Live Recording, Grosses Festspielhaus, Salzburg, Austria
最後に
個人的に言えば、私はカラヤンについては、頂点を目指していた50年代から60年代初め、そして晩年の少し枯れてきた頃の録音が好きです。
「帝王」と呼ばれ、絶頂期にあった頃の、あまりにも完璧でゴージャスな演奏には、正直なところ少し距離を感じてしまいます。
カラヤンは81歳で急死しました。
しかも当時のソニーの大賀社長との商談中だったという、非常にショッキングな最期でした。
カラヤンの最期の言葉が「今はその時ではない」と伝え聞きますが、本人が一番残念と感じたことでしょう。
あれほど栄華を誇った指揮者も、晩年にはベルリン・フィルと別れ、フリーの老指揮者として活動していました。
だからこそ思うのです。
もし叶うなら、そうした晩年のカラヤンの演奏を、もっと聴いてみたかった、と。
肩書きや権威から少し自由になった一人の音楽家として、何を音に託そうとしていたのか。
その答えの一端が、’86年に録音した最後のモーツァルト《レクイエム》には、確かに刻まれているように感じています。




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