ヘルムート・リリングを偲んで 偉大なるバッハの伝道師

リリング
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こんにちは、
ともやんです。

数日前、巨匠ヘルムート・リリングの訃報を知りました。
享年92歳。

巨匠ヘルムート・リリングの訃報、心よりお悔やみ申し上げます。
バッハ演奏の歴史に金字塔を打ち立てた彼の功績は、まさに唯一無二のものだと思います。

しかし、こんなことを書きながら、申し訳ありませんが僕自身、リリングの録音をたくさん聴いてきたわけではありません。

リリングの高名はかねがね耳にしていました。
J.S.バッハの権威とも聞いていました。

ではなぜあまり聴いてこなかったか?

うーん、よくわかりませんが、個人的な印象では演奏家よりも教育者としてのイメージが強かったのかもしれません。

とにかくそんな先入観を取っ払って、リリングの録音を聴いてみることにしました。

その前にリリングのプロフィールなどを紹介します。

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ヘルムート・リリングを偲んで

学生時代のヘルムート・リリングが心を惹かれたのは、意外にも当時「主流」とは言えなかった音楽の世界でした。

1954年、彼はシュヴァーベン地方の小さな村ガヒンゲンで、友人たちと音楽会をスタートさせます。

レヒナーやシュッツといった古い時代の作品を掘り起こし、仲間と共に歌い、奏でる日々。それがリリングの原点でした。

1950年代、ロマン派音楽を演奏することはある種の「タブー」とされていましたが、彼はそんなリスクを恐れず、情熱のままにその世界へ飛び込みます。

しかし、彼とアンサンブル「ガヒンゲン・カントーレイ」が何よりも情熱を注いだのは、「現代の作曲家」たちの作品でした。

彼らはまたたく間にレパートリーを広げ、世に知られる存在となっていきます。

音楽の歴史を刻む「偉業」と「情熱」

音楽に飢えた若いアンサンブルを率いて、リリングは膨大な数の初演を手がけました。

彼の音楽の旅は、モンテヴェルディから現代音楽まで、驚くほど多岐にわたります。
アルヴォ・ペルトの『連祷』や、シューベルトの未完の作『ラザロ』の完成版、さらには14人の作曲家が共作した『和解のレクイエム』など、数多くの名作を世に送り出してきました。

そして1985年3月21日。バッハ生誕300周年の記念すべき日に、彼は音楽史に残る金字塔を打ち立てます。

「バッハの教会カンタータ全曲録音」という、前人未到のプロジェクトの完成です。

この偉業はすぐさま世界的に評価され、名誉ある「グランプリ・デュ・ディスク」を受賞。その後、没後250周年に向けて世俗カンタータの録音へと続いていきました。

「音楽を創ることは、平和を学ぶこと」

ヘルムート・リリングという人は、単なる「指揮者」の枠には収まりきらない人物でした。

教会音楽と声楽という自らのルーツを大切にしながらも、単なる「仕事」としての演奏には一切興味を示しませんでした。

彼の音楽づくりは、緻密で学術的な正確さに裏打ちされていながら、常にポジティブなエネルギーに満ちていました。

その魔法のような雰囲気の中で、演奏家たちは音楽に込められた「本当の意味」を自ら発見していくのです。

この信念こそが、彼の活動の核にありました。
1981年に彼が創設した「国際バッハ・アカデミー」が「音楽のゲーテ・インスティトゥート」と呼ばれるのは、そこが単なる教育の場ではなく、国籍や背景を超えて人々が互いを認め合い、深くつながる場所だったからです。

哲学がもたらした数々の栄誉

リリングが受けた数えきれないほどの栄誉は、彼の音楽哲学そのものへの賛辞でもありました。

  • * 1985年:テュービンゲン大学より「神学名誉博士号」
    * 1990年:ドイツ統一記念式典で、大統領の要請により「ベルリン・フィルを指揮」
    * 1995年:「テオドール・ホイース賞」「ユネスコ音楽賞」

生涯を通じて、音楽の力を信じ、バッハの精神を現代に伝え続けたヘルムート・リリング。彼の残した響きは、これからも私たちの心の中で鳴り止むことはありません。

※以上、ナクソス・ミュージック・ライブラリーの解説(原文は英語)読みやすいように編集しました。

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リリング入門編のCD紹介

リリングの録音は、J.S.バッハ中心にたくさん残されています。
それは、まさにバッハ演奏のスタンダードというものではないでしょうか?
僕は、古くはオットー・クレンペラーの仰ぎ見る雄大な演奏から、古楽器スタイルの小気味良いガーディナーまでそれなりに聴いてきたつもりです。

その中でリリングを聴くとまさに中道の美というものを感じます。
どこまでも端正で真摯で、聴き込むことでまさにバッハ音楽の真の美しさを感じるのではないかと思います

急な訃報で多少動揺していますが、いくつか聴いた中からリリング入門編におすすめのCDをご紹介したいと思います。

バッハからブラームスの合唱作品集

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ – Johann Sebastian Bach (1685-1750)
・『破れ、砕け、壊て』 BWV205
・『おお、イエス・キリスト、わが生命の光』 BWV118
・『われらが神は堅き砦』 BWV80
・クレド&クルチフィクス(ロ短調ミサ曲BWV232より)
・『消し去りたまえ、いと高き者よ、わが罪を』 BWV1083
・『われら涙流しつつひざまずき』(マタイ受難曲 BWV244より)

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル – George Frideric Handel (1685-1759)
・『御子がわれらに生まれたもうた』(メサイア HWV56より)
・『小羊こそふさわしけれ』(メサイア HWV56より)

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト – Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
・『ラウダーテ・ドミヌム』(証聖者の荘厳晩課 K339より)
・『ジェズ・クリステ』(ミサ曲ハ短調 K427(417a)より)
・『ラクリモーサ』(レクイエム K626より)

フェリックス・メンデルスゾーン – Felix Mendelssohn (1809-1847)
・『僧侶の戦争行進曲』(『アタリー』 Op74より)

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン – Franz Joseph Haydn (1732-1809)
・キリエ第1-3番(ネルソン・ミサ HobXXII:2より)
・『大いなる御業は成りぬ』(オラトリオ『天地創造』より)

フランツ・シューベルト – Franz Schubert (1797-1828)
・サンクトゥス(ミサ曲変イ長調 D678より)

ヨハネス・ブラームス – Johannes Brahms (1833-1897)
・『万軍の主よ、あなたのすまいはいかに愛すべきかな』(ドイツ・レクイエムより)

シュトゥットガルト・ゲッヒンゲン聖歌隊 – Stuttgart Gachinger Kantorei
シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム – Stuttgart Bach Collegium
ハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団 – Wurttemberg Chamber Orchestra of Heilbronn
オレゴン・バッハ祝祭合唱団 – Oregon Bach Festival Choir
オレゴン・バッハ祝祭管弦楽団 – Oregon Bach Festival Orchestra
ヘルムート・リリング – Helmuth Rilling (指揮)

J.S. バッハ/ヘンデル/モーツァルト/メンデルスゾーン:合唱作品集

リリングの真価は合唱曲でより発揮されるようで、多くの録音があります。
このCDは、そんな膨大な合唱曲の録音からエッセンスをギュッと詰め込んだ1枚です。
これをまず聴いて、それから聴きたい作曲家や作品に進むと良いと思います

J.S.バッハ:オーケストラ作品集

hansslerレーベルの下行われたバッハ大全集のプロジェクトは、指揮者でバッハ研究家、ライプツィヒ国際バッハ協会会長としても知られたヘルムート・リリングが監修し、彼と彼の信頼するアーティストたちによる演奏を中心に収録した一大企画です。

このBOXは、プロジェクトの集大成たる「バッハ大全集」ボックスにもまとめられた鍵盤作品集、室内楽作品集、管弦楽作品集の中から、オーケストラを要する作品を中心に収録した内容です。

J.S.バッハ: 管弦楽曲集、協奏曲集

ドイツのベーレンライター社が刊行する「新バッハ全集」の楽譜を用い、バッハ作品のすべてを網羅した唯一の「大全集」プロジェクトとして当時から大いに話題を集めました。
半世紀以上にわたるリリングの活躍の軌跡を顧みても、今なおJ.S.バッハ音盤史に燦然たる存在感を放つ大全集の存在は欠かすことができません。
管弦楽組曲とブランブルク協奏曲は全曲、さらにチェンバロ協奏曲やヴァイオリン協奏曲の大部分を収録。
さらに、編曲作品と推測されるチェンバロ協奏曲を元に復元されたオーボエ協奏曲とヴァイオリン協奏曲も収容されています。
リリングが一目置くソリストたちの顔ぶれも素晴らしく、オーボエ・ソロにはインゴ・ゴリツキ、チェンバロ・ソロにはロバート・レヴィンらをはじめとする世界的ソリストたちが登場するなど、バッハ演奏に定評のある名手たちによる盤石の布陣が組まれています。
ヴァイオリン協奏曲では往年の巨匠クリストフ・ポッペンの妙技はもちろんのこと、録音当時は屈指の若手実力派として躍進を遂げていた名手イザベル・ファウストとの共演も注目所です。
オケは、オレゴン・バッハ祝祭室内管弦楽団とシュトゥットガルト・バッハ・コレギウムというお馴染みの面々。
すべての指揮をリリングが行っているため、全体を通して彼らしいキレのある溌剌とした音運びを堪能するBOXに仕上がっています。
キングインターナショナルより
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まとめ

急ぎ足で、ヘルムート・リリング氏の録音をつまみ食い的に聴きました。

どの演奏も誠実に作品を敬意を込めて再現されているなと強く感じました。
ついついBGM的に聞き流してしまいそうですが、逆に聴き込めば聴き込むほど味わいを感じると思います。

これらの素晴らしい演奏をどうして聴いてこなかったのか、自分を呪いました。
もしかして、同時代のアーノンクールや古楽器スタイルのもっと刺激的な演奏に興味を奪われていたのかもしれません。

生前中は、その高名を知るのみで、訃報によってリリング氏の芸術を知る機会となったのは皮肉ですが、幸いにもリリング氏は大量の素晴らしい録音を残してくれました。

それらの録音を聴いていくことがヘルムート・リリング氏を偲び、一番の供養になると思います。



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