フルトヴェングラーのベートーヴェン 幻の全集
フルトヴェングラーはレコード録音には積極的でなく、ベートーヴェンをもっとも得意としていたにもかかわらず、その生涯にまとまった形としてのベートーヴェンの交響曲全集録音は行っていません。
しかし、全集の録音企画はあって、50年~54年に掛けて、
第1番、第3番”英雄”、第4番、第5番、第6番、第7番の6曲をウィーンフィルとEMIで録音しています。
そして、これに第9番は、51年のバイロイト祝祭管を加えれば、7曲までは揃うわけです。
しかし、第2番と第8番の録音がありません。
クラシック音楽愛好家のみならず、フルトヴェングラーのベートーヴェン全集というのは、夢ともいえる存在でした。
ところが今から40年以上前、フルトヴェングラーが亡くなって20年目の1974年に米オリンピック・レコードから史上初のフルトヴェングラーの「ベートーヴェン交響曲全集」が発売されたのです。これには世界中のファンは驚愕しました。
なぜならそれまでは、フルトヴェングラーの第2番と第8番の録音がないのではないかと考えられていました。
しかし、その後第8番は、48年のストックホルムフィルとの録音が発見され、日本でも72年に東芝EMIから発売されました。
なお、現在では、53年のベルリンフィル、54年のザルツブルク音楽祭でのウィーンフィルとの演奏も聴かれるのが嬉しい。
だから74年に青天の霹靂のように、欠落している第2番も含めて米オリンピック・レコードから全集として発売されると世界中のファンが驚いたのです。
ただ残念ながら間もなく、第2番が、29年にエーリッヒ・クライバーが、ベルリン国立歌劇場管を指揮した演奏と分かり、この全集は再販されることなくお蔵入りしてしまい”幻の全集”となってしまいました。
そして”幻の全集”発売から40年以上経った昨年、キングインターナショナルから、74年制作のマスターテープから、最新マスタリングで蘇ったのです。
この全集には、珍しい50年のコンセウルトヘボウとの第1番や、52年のローマ・イタリア放送響との英雄、第5、田園。戦中の4番、7番、9番と貴重な録音が収録されています。
フルトヴェングラーのベートーヴェン第5番 異彩の名演
ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
交響曲第5番 ハ短調 作品67
ヴィリヘルム・フルトヴェングラー指揮
ローマ・イタリア放送交響楽団
Ⅰ Allegro con brio 08:50
Ⅱ Andante con moto 11:42
Ⅲ Scherzo-Allegro 06:22
Ⅳ Allegro 09:12
1952年1月10日 ローマ(放送用ライブ)
この全集の中でもローマ・イタリア放送響との第5番は、数多いフルトヴェングラーの第5番の録音の中でも異彩を放つ名演です。
その一番の理由は、ローマ・イタリア放送響がフルトヴェングラーに慣れていないので、フルトヴェングラーも丁寧に指揮をしている感じが伝わってきて、ベルリンフィルやウィーンフィルとのように自由闊達、縦横無尽さがなく、語り掛けるような滋味を持った演奏になっています。
評論家の宇野功芳氏も数多いフルトヴェングラーの第5番の中でも、47年の復帰コンサートと54年のスタジオ録音とライヴ録音に次ぐ名演としています。
フルトヴェングラーのベートーヴェン交響曲”幻の全集”
この全集が手元に届いたのが年末で、僕はまだ全てを聴いていません。
全てを聴いて、またレビューを書き込みます。
でも、フルトヴェングラーが亡くなって、今年で64年目。
未だに世界中のファンを魅了する魅力ってなんだろうって考えてしまいます。
僕もその一人で、死ぬまでフルトヴェングラーの残した録音を聴き続けることでしょう。
第2番と第8番の録音が見つからない時に、偽の録音や、インチキまがいの録音も発表されたそうです。それだけ、フルトヴェングラー人々を惹きつけ、注目を集まるからでしょう。
もしかして、まだまだ新発見、世界初出のフルトヴェングラーのベートーヴェン〇番!なんてニュースが飛び込んでくるかもしれません。
フルトヴェングラー亡き後、ベルリンフィルの終身指揮者になり”帝王”とも呼ばれたカラヤンが、あれだけ何度もベートーヴェンの全集を録音したのも、フルトヴェングラーへのライバル心、いや嫉妬からだったのではないか、という人もいます。
常の自分の演奏を最新のメディアに記録し続けたカラヤンでも、亡くなった後も新発見の録音が出て、話題になるフルトヴェングラーに嫉妬心に苛まされていたのかもしれませんね。
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