こんにちは、
ともやんです。
ベートーヴェン交響曲全集のスタンダードは?
やっぱり、これでしょ!
ハンス・シュミット-イッセルシュテット(1900-1973)指揮
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団録音:1965年11月~69年6月
会場は、ソフィヘンザール、ウィーン。
ドイツ音楽復興に半生を賭けた男 ハンス・シュミット=イッセルシュテット
第二次世界大戦で、散々に叩きのめされたドイツで、自身も40代の働き盛りでいながら活躍できずハンブルクで隠遁生活をしていたシュミット-イッセルシュテットのもとに二人のイギリス将校が訪ねてきました。
敗戦直後の1945年のことでした。
何事か、身構えるシュミット-イッセルシュテット。
何と言っても相手は戦勝国側の将校で、こちらは敗戦側だ。
どこかに連行されるのだろうか、と不安な気持ちをもちながら相対すると、彼らは思いもしないことを言いだした。
ハンブルクにイギリスのBBCやフランスの国立放送に負けないラジオ放送局を作りたい。
そして敗戦で傷ついたドイツの人民を慰めるためにオーケストラを創設したい。それも生半可なオーケストラではない。
ウィーンフィルのアンサンブル、コンセルトヘボウの弦、ボストン響の管にも負けないオーケストラを作りたい。
そのために貴方にぜひ力になってほしい。
おお、これで燃えなければ男ではない。
まるで映画の様に、ここからシュミット-イッセルシュテットの夢のオーケストラ創設の奔走が始まったのです。
夢のオーケストラ創設に奔走
彼には、一台の車が支給され、これで収容所を回り、オーデションをして廻りました。
そして厳しい練習を繰り返し、なんと45年11月には最初のコンサートを開催しています。
それが現在の北ドイツ放送エルプフィルハーモニー交響楽団。
初代の首席指揮者シュミット-イッセルシュテットもと、世界最高クラスのオーケストラに成長しました。
まさにドイツ復興の夢を具現化した実際の物語だったのです。
そんなゲルマン魂をもったシュミット-イッセルシュテットのベートーヴェン全集を聴かずに死ねるものです。
しかもウィーンフィル最初の全集録音に際して、ウィーンフィルが指名したのは、そんなシュミット-イッセルシュテットの実力もさることながら人間的魅力もあっでのことと思います。
ベートーヴェン 交響曲全集としての総評
シュミット-イッセルシュテット&ウィーンフィルの全集全体に言えることはその格調の高さです。
時にはもっと強く、もっと激しくと思う部分がありますが、全編、落ち着いて心のこもった演奏を展開しています。
響きは整理され、楽器間のバランスが絶妙で、どの曲を聴いても心が洗われる思いです。
これだけ指揮者、オーケストラ、録音と三拍子揃った全集はなかなかないと思います。
ウィーンフィルは、70年代にはカール・ベーム、レナード・バーンスタインと全集を録音しています。
どちらも名演で名盤ですが、その解釈の普遍性からシュミット-イッセルシュテット盤は、色褪せることはありません。
第1番、第2番、第4番は、どっしりと落ち着いた名演で、楽器の活かし方が絶妙で、それがたまらない魅力になっています。
第3番「エロイカ」は、もっと激しく、もっと逞しくと思う部分がないでもありませんが、古典的で造形美に溢れた名演です。
エロイカは曲想から、フルトヴェングラー的な男性的な激しさや魂を抉るような演奏もいいのですが、ウィーンフィルの厚みと深みのある美音を活かした、心を込めた演奏もなかなか唸らせてくれます。
第5番は充実感にみちたウィーンフィルの力演と豊潤でコクのある銘酒のような味わいのある名演です。
第6番「田園」は、ウィーンフィルの瑞々しく冴えた音色がたまらない魅力です。
第7番は、この曲の名演・名盤に上げる人はほとんどいませんが、それが僕には不思議でなりません。こんなに豊潤なサウンドを鳴らして、どっしりと落ち着いた演奏は少ないでしょう。
ここでもウィーンフィルのコクのある音色を活かして彫りの深い陰影に富んだ演奏を展開しています。
数多い、第7盤のCD、LPの中もで僕が特に好きな演奏ですね。
第8番は、この曲のベスト盤として挙げる人も多い名盤です。
上品で格調高い演奏です。
最後の第9番「合唱」は、究極のスタンダード的名演・名盤です。
指揮者・オーケストラ・録音の三拍子に加え、ソリストと合唱団が入ります。
数多いCDの中には演奏は素晴らしいのにソリストが残念というCDがないもありません。
その点、シュミット-イッセルシュテット盤は、何の過不足もない演奏です。第4楽章あたりでは、もう少し効果をだしたらと思う部分もありますが、何度も聴き返すCDでは、敢えてなくても良いと思います。
ベートーヴェン: 交響曲全集 (第1番-第9番《合唱》)<タワーレコード限定> ハンス・シュミット=イッセルシュテット 、 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1965年から69年にかけてDECCAが収録したこの全集は、ウィーン・フィルにとって史上初のベートーヴェン:交響曲全集のセッション録音となりました。
イッセルシュテットとDECCAの組み合わせも、1958-59年にかけてバックハウスをソリストとして完成されたベートーヴェンのピアノ協奏曲全集の2種のみ(今回未収録の序曲は別盤のカップリングとして後日収録予定)であり、当時それほど録音を行ってはいなかったイッセルシュテットにとっても貴重な記録となりました。
まとめ
ベートーヴェンの交響曲全集は、持っていて損はないし、何度も聴き返して、ベートーヴェンが後世に残した不滅の名曲と共にその精神も味わえば、必ず人生を豊かにしてくれると思います。
ベートーヴェンの交響曲全集は、無形の世界遺産的な存在ですから、
それを録音する指揮者、オーケストラもそれぞれ強い思いを持って
臨んでいるはずです。
だから、絶対の名盤というのはなくて、貴方がいいと思ったものを手に入れてください、というしかありません。
またシュミット-イッセルシュテット盤が、最高というものでもありません。
でもベートーヴェンの交響曲全集となった場合、やれカラヤンだバーンスタインだ朝比奈隆だと名盤を挙げいくと、あっ、シュミット-イッセルシュテット盤も忘れちゃいけによね、
と後になって思わせる名盤です。
だから、録音から50年ほど経っているにもかかわらず、いまだにリリースされている理由だと思います。
※現在は全集ではなく、分配で発売されているようです。
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