こんにちは、
ともやんです。
カルロ・マリア・ジュリーニ(1914-2005)。
イタリアの巨匠ですが、僕には孤高の指揮者と感じます。
これだけの知名度、人気、そして実力を持ちながら、大きなポストに就かず、もっぱら客演で著名なオーケストラに招かれていたからです。
世代的には、クーベリックと同年で、6歳年上にカラヤン、2歳年上にヴァント、4歳年下にバーンスタインがいます。
1984年に夫人の病気介護を理由に、ロサンジェルス・フィルハーモニックを辞任してからは、まさに、世界を渡り歩く助っ人指揮者という感じで、各客演先で、好評を博し、数々の名盤も残しています。
またその演奏スタイルも独特で、特に晩年になるほど、その傾向は強くなったよう感じます。
ジュリーニとウィーンフィル ブラームス交響曲第1番
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このブログでは以前にこんな記事を書いていますが、ジュリーニの演奏には、遅いテンポによる濃厚な歌があります。
以前は、そのくどさが嫌でしたが、最近その良さがわかってきました。
本日、1978年ロサンジェルス・フィルハーモニック時代の名盤、ベートーヴェン”英雄”をご案内します。
ジュリーニのベートーヴェン交響曲第3番は聴きごたえ十分!
ロサンジェルス・フィルハーモニック時代に、ジュリーニは、ベートーヴェンの交響曲を英雄、運命、田園の3曲を録音しています。
どれも名演で、僕はLPで所有していますが、もう30年近く前、聴き惚れていたものです。
この英雄は、初めて聴いて驚きました。
何と言ってもそのテンポの遅さです。
しかし、それが全くおかしくない。
むしろこのテンポがいいのだ!という感じで、聴いていてこんなにじっくり聴かれる”英雄”って素晴らしいな、と思えてきます。
しかも、テンポが遅いからと、弛緩することは全くなく、終始、ピーンと緊張の糸が張った状態です。
毛筆の筆で、墨をたっぷりつけて、一字一句疎かにせず、楷書体で書きあがたという”英雄”なのです。
1982年(昭和57年)に出版された宇野功芳著「僕の選んだベートーヴェンの名盤」で、
このジュリーニ&ロサンジェルス・フィルハーモニックの演奏を取り上げています。
“剛毅な響きと緊張力、落ち着いた綿密な味わい、優しい心遣い、などが全曲を支配する。
第二楽章冒頭の、青きインテリといった趣のピアニッシモ、そして160小節からの低弦の凄まじい意志力の対比など最も良い例といえよう。
なかなか味のある表現だが、オケの響きは含みや渋味に乏しいアメリカ的なもので、そのギャップがやや気になる”
と書いています。
宇野氏は、ジュリーニ評でよく”青きインテリ”という表現を使いますが、ぼくはその度に心の中で”青きインテリ”ってなんやねん!と突っ込みを入れています。
僕は、宇野さんのようなプロの評論家ではないので、アメリカのオケとのギャップは感じないので、それ以外は、宇野さんの評論通りの味わい深い名演の名盤です。
もう40年も前の録音ですが、聴いて損はない名盤です。
ジュリーニの名盤 ベートーヴェン交響曲第3番”英雄”を聴け!
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
交響曲第3番 変ホ長調 「英雄」 Op. 55
Symphony No. 3 in E-Flat Major, Op. 55, “Eroica”
1.(20:34) I. Allegro con brio
2.(17:20) II. Marcia funebre: Adagio assai
3.(06:32) III. Scherzo: Allegro vivace
4.(13:04) IV. Finale: Allegro molto
total(57:30)
ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団 – Los Angeles Philharmonic Orchestra
カルロ・マリア・ジュリーニ – Carlo Maria Giulini (指揮)
録音: November 1978, Shrine Auditorium, Los Angeles, United States
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ロベルト・シューマン – Robert Schumann (1810-1856)
13:37 劇音楽「マンフレッド」 Op. 115 – 序曲 5.
Manfred, Op. 115: Overture
ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団 – Los Angeles Philharmonic Orchestra
カルロ・マリア・ジュリーニ – Carlo Maria Giulini (指揮)
録音: November 1981, Royce Hall, University Of California, Los Angeles (U.C.L.A.), United States
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」/シューマン:「マンフレッド」序曲(ロサンゼルス・フィル/ジュリーニ)
『エロイカ』は1978年10月にLAPO音楽監督に就任したジュリーニの記念すべき録音第1弾。当時これほど遅いテンポの『エロイカ』は聴いたことがなかったし,その音楽密度が素晴らしく濃いことに度肝を抜かれた。
LPではA面の収録時間が38分に及んでいたため再生に気を遣ったが,今こうして優れたリマスタリングCDで,この雄渾な演奏が味わえるのは本当に嬉しい。
『マンフレッド』は,『ライン』とともに1980年12月に録音されたもの。僅か2年でLAPOの響きが隅々まで練り上げられ,驚くほど繊細さを増していることがわかる。
HMVのウェブサイトのレビューより
最後に
カルロ・マリア・ジュリーニは、晩年、来日を望まれましたが、実現しませんでした。
何かの間違いで、単身ふらっと来日して、NHK交響楽団なんかと綿密なリハーサルなどして、一回限りのコンサートなんて開いたら、チケットがどんなに高くても行っただろうな。
曲目は、やっぱりベートーヴェンの第九がいい。
日本音楽史に残るような語り継がれる名演が誕生したかも知れない。
そう1989年にベルリンフィルとの第九が残されていますが、今度、それについてもレビューしますが、これほど一期一会の大切さを思わせる指揮者いないと思います。
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