こんにちは、
ともやんです。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲のCDをいろいろ聴き進めていると素晴らしい演奏に出会いました。それは、ピアニストよりもその伴奏をしているオーケストラに魅せられてしまいました。
オーケストラはケルン放送交響楽団。指揮者はギュンター・ヴァント(1912-2002)。
ヴァントというと90年代に神格化され、朝比奈隆さんと共に最後の巨匠と呼ばれた名指揮者です。
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ギュンター・ヴァント 協奏曲エディション
その厳格で構成美溢れる演奏は、思わず襟を正したくなります。
でも、僕が聴いた録音が70年代前半の録音。
ヴァントが60代前半で、後年の厳しさよりももっと瑞々しさや生きる喜びを感じさせる演奏で、僕は一聴のもとに魅せられてしまいました。
70年代のヴァントに魅了される
90年代のヴァントは、あまりの偉大さに近寄りがたい雰囲気がありましたが、この時代はもっと親しみやすい印象を受けました。
ケルン放送交響楽団(現ケルンWDR交響楽団)は、戦後の1947年設立。
ドイツは、第2時敗戦後、素晴らしいオーケストラがいくつも創設され、文化の向上に努めました。世界的に有名なところでは、北ドイツ放送交響楽団(1945年創設)、バンベルグ交響楽団(1946年創設)、バイエルン放送交響楽団(1949年創設)、そしてケルン放送交響楽団は1947年。
またケルン放送響では、若杉弘氏(1935-2009)が、77年から83年まで首席指揮者を務めました。
若杉氏は、慶応大学を中退し芸大に入り直した方で、同い年の小澤征爾とともに世界で活躍する指揮者となりました。
僕の親父世代で、小田実(1932-2007)の『何でも見てやろう』、五木寛之(1932-)の『青年は荒野をめざす』に象徴されるように、若者たちが夢と希望を胸に海外に飛び出していったロマン溢れた時代の人たちです。
ヴァント&カサドシュ、ギレリス ベートーヴェンピアノ協奏曲
さて、今回ご紹介する録音は、フランスの名ピアニスト、ロベール・カサドシュ
と旧ソ連の名ピアニスト、エミール・ギレリスとの共演です。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op. 58
Piano Concerto No. 4 in G Major, Op. 58
1.(16:05) I. Allegro moderato
2.(04:25) II. Andante con moto
3.(09:29) III. Rondo: Vivace
total(29:59)
ロベール・カサドシュ – Robert Casadesus (ピアノ)
ケルン放送交響楽団 – Cologne Radio Symphony Orchestra
ギュンター・ヴァント – Gunter Wand (指揮)
録音: 6 March 1970
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ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 「皇帝」 Op. 73
Piano Concerto No. 5 in E-Flat Major, Op. 73, “Emperor”
4.(20:29) I. Allegro
5.(08:30) II. Adagio un poco mosso –
6.(10:51) III. Rondo: Allegro
total(39:50)
エミール・ギレリス – Emil Gilels (ピアノ)
ケルン放送交響楽団 – Cologne Radio Symphony Orchestra
ギュンター・ヴァント – Gunter Wand (指揮)
録音: 13 December 1974, Cologne, Germany
ロベール・カサドシュ(1899-1972)は、フランス・パリ生まれの名ピアニスト。
亡くなる2年前の録音で、かつての正規録音の演奏と比べてもその洗練された技巧は健在で、より落ち着いたテンポによる風格と安定感は抜群です。
モーツァルトの協奏曲のように聴こえ、そのチャーミングな表現に惹かれます。
エミール・ギレリス(1916-1985)は、ウクライナ・オデッサ生まれのユダヤ系ロシア人のピアニスト。鋼鉄のテクニックと称されるくらい完璧なテクニックを有し、ベートーヴェンではその骨太で男性的な表現で定評がありました。
ただ、この時代は西側で抒情的な表現を深めていた時代で、胸のすく強靭なタッチと抒情性を合わせ持った名演です。その一番わかる部分は第3楽章で、落ち着いたテンポで深い抒情性を漂わせながら進める表現は最高です。
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なお、両曲を収録したLPがAltusから出ています。
マニアの方には嬉しいお知らせです。
まとめ
ヴァントが錚々たる名手たちと共演した協奏曲集、驚きの価格で登場したCDセットです。
Profile レーベルといえばギュンター・ヴァント。同レーベル所有の音源から、協奏曲を集めた6枚組Boxが登場します。
なによりソリストの豪華さに目を瞠らせられます。ピアノではマガロフ、フィルクシュニー、カサドシュ、ギレリス、ボレット。
いずれも絶品ながら、後天性免疫不全症候群を発症する直前で、円熟の極みにあったボレット入魂のチャイコフスキーが聴きもの。
ヴァントも燃えに燃え、これ以上説得力にあふれたチャイコフスキーの協奏曲は滅多にお目にかかれないと申せましょう。
管楽器はオーボエのシェレンベルガー、ホルンのバウマンとブレインが注目。デニス・ブレインとのモーツァルトは、1951年の放送用セッションで、モノラルながら会場ノイズや拍手はありません。
早いテンポによるきびきびした音運びはヴァントながらですが、ブレインは危なげな所の一切ない完璧な演奏を繰り広げています。
ヴァイオリンで注目なのは女流エディット・パイネマンによるプロコフィエフの協奏曲第1番。協奏曲エディションと銘打ちながらも、ヴァント十八番のハイドンの交響曲第76番やブラームスのセレナード第1番、モーツァルトの序曲集など純オーケストラ・ナンバーも堪能できます。
キングインターナショナル
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