モーツァルトは、生涯41曲の交響曲を作曲したとされていて、
史上初の全集となったカールー・ベーム指揮ベルリンフィルでは
その41曲が収録されています。
しかし、その後の研究でいろいろ発見があったようで、
ホグウッドの全集では、なんと71曲も収録されています。
まあ、個人的にはそういう研究は学者の方にお任せして
音楽ファンとしては、純に名曲の名演を楽しみたのが素直な気持ちです。
さて、モーツァルトの交響曲が結局、何曲作曲されたとしても
名曲は名曲として永遠で、やっぱり最後の3曲は、誰が何と言おうが、
最高峰の位置は揺るぎないと思います。
でも好き嫌いでいうと、僕は38番“プラハ”が一番好きなんですね。
モーツァルトの交響曲第38番k.504“プラハ”とは
1786年、モーツァルト30歳の時の作品。
この年12月にウィーンで作曲され、翌年そうそうプラハで
モーツァルト指揮のもとに初演されました。
プラハという名はその機縁でつけられたものです。
プラハは、モーツァルトにとって因縁の深い年でした。
歌劇「フィガロの結婚」は大成功をおさめ、
「ドン・ジョバンニ」は、プラハ市の求めに応じて作曲されたからです。
交響曲“プラハ”もモーツァルトの全交響曲の中でも
最高位のもので、曇りのない、さわやかで、端麗な曲です。
こんこんと湧き出てくるようなモーツァルトの楽想は、
いたるところに流れ発揮されています。
シューリヒトとベルリンフィルとのモーツァルト”プラハ”
ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
交響曲第38番ニ長調K.504“プラハ”
Ⅰ(09:45)Adagio-Allegro
Ⅱ(09:19)Andante
Ⅲ(04:11)Finale(Presto)
カール・シューリヒト指揮
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
録音1964年5月8日、ベルリン、フィルハーモニーでの実況録音
カール・シューリヒトの“プラハ”では、このCDの前年63年に録音された
パリ・オペラ座管弦楽団との名盤が有名です。
評論家の宇野氏、福島氏もこの録音を絶賛しています。
福島氏の文章を引用しますと
繰り返したいのは、シューリヒトの“プラハ”には、
この颯爽とした速いテンポの中に、人間のすべての感情が明滅しているということである。まるで、走馬灯に映る人生の一コマのように、歓び、哀しみ、寂しさ。
慟哭といったさまざまな感情が浮かんでは消えていく。
パリ・オペラ座管盤で残念なのが、オーケストラが一流ではなく、
その点を指摘している評論は多いですね。
そのうっぷんを晴らしてくれるのが、このベルリンフィル盤です。
ステレオ録音ながら実況録音で古さを感じさせますが、
その分、逆に生々しさを感じさせます。
聴かずに死ねない一枚ですよ。
まとめ
シューリヒトが亡くなって昨年で50年が経ちました。
しかし、忘れられるどころか、その人気は衰えることはありません。
それは、すっきりとしてテンポ設定と瑞々しさを基調として格調高い演奏で、
古さを感じさせないためと思います。
そして僕は、その演奏にチャーミングな愛らしさを感じてしまうんですね。
だから、聴き終わったらまた聴きたくなるという飽きない演奏が
シューリヒト一番の魅力だと思います。
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