こんにちは、
ともやんです。
1960年のウィーン芸術週間。
巨匠クレンペラーが手兵フィルハーモニア管とともに、楽友協会の大ホールで5回にわたるベートーヴェン・ツィクルスを成し遂げました。
怒涛のような集中力、内燃するエネルギー、そして至る所に聴こえる巨匠の声──これはまさに“生きた芸術”の記録です。
クレンペラーのベートーヴェン交響曲ツィクルス1960
まさに聳え立つ巨峰!
クレンペラー+フィルハーモニア管による、1960年ウィーン楽友協会に於けるベートーヴェン・ツィクルス。
有名なライヴ録音です。
厳格なリズムの中にも、木管の自由な表情が羽ばたくように響き、思わず背筋を伸ばしたくなる気迫が感じられます。
短期間で一気に演奏されたこのツィクルスはクレンペラーも余程体調が良かったようです。
収録音源には、巨匠の怒号や指示の声が随所に記録されており、これは指揮者の個性が音楽と一体化している貴重な証言でもあります。
今日の録音では考えられない「舞台裏」的魅力にあふれています。
ウィーン芸術週間の聴衆も納得の名演として語り継がれている超名演です。
クレンペラー×フィルハーモニア ベートーヴェン・ツィクルス
クレンペラーのベートーヴェン交響曲全集 1960年5月29日ライブから
クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団のベートーヴェン交響曲はツィクルスは、1960年5月29日を皮切りに、5月31日、6月2日、6月4日、6月7日に行われました。
初日を飾ったのは、第2番、第3番“英雄”でした。
ベートーヴェン交響曲第2番
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
交響曲第2番 ニ長調 Op. 36
Symphony No. 2 in D Major, Op. 36
I.(13:24) Adagio molto – Allegro molto
II.(11:55) Larghetto
III.(03:48) Scherzo
IV.(07:09) Allegro molto
total(36:16)
フィルハーモニア管弦楽団?-?Philharmonia Orchestra
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (指揮)
録音: 29 May 1960, Vienna, Austria
ウィーン芸術週間1960 – ベートーヴェン: 交響曲全曲演奏会 オットー・クレンペラー (タワーレコード)
第2番は、75才のクレンペラーが、若々しいフレッシュな演奏を展開しているのに心が打たれます。
颯爽としたテンポで生き生きとして躍動感溢れる演奏は、演奏者を伏せて聴くと老匠クレンペラーとは思えないくらいです。
ベートーヴェン交響曲第3番“英雄”
交響曲第3番 変ホ長調 「英雄」 Op. 55
Symphony No. 3 in E-Flat Major, Op. 55, “Eroica”
I.(15:46) Allegro con brio
II.(14:50) Marcia funebre: Adagio assai
III.(06:15) Scherzo: Allegro vivace
IV.(12:37) Finale: Allegro molto
total(49:28)
フィルハーモニア管弦楽団?-?Philharmonia Orchestra
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (指揮)
録音: 29 May 1960, Vienna, Austria
第3番英雄は前年のスタジオ録音では、内省的な印象を受けた英雄も少し速めテンポで、活気あふれる雄渾な演奏を展開しています。
冒頭は淡々と始まりますが、次第にテンションが高まり、終盤にはクレンペラーならではの執念と入魂が音に込められていきます。
何と言っても内声部の活発な動きもよく捉えられていて聴いていて本当に引き込まれますよ。
EMIに残されたスタジオ録音全集とは一味違う、ライヴならではの緊迫感と即興的表現が魅力。特に「英雄」では、その差が明確に表れています。
クレンペラーファンならずとも必聴の名演・名盤だと思います。
さいごに
ウィーン芸術週間出演のため、手兵フィルハーモニア管弦楽団を率いてウィーンを訪れたクレンペラーは、体調も絶好調だったようで、ベートーヴェンの連続演奏会を大成功に導きました。
初日の5月29日には、得意の『英雄』と第2番ほかを演奏。
この日は同じ楽友協会大ホールで、昼間にはブルーノ・ワルター指揮ウィーン・フィルにより、マーラーの4番と『未完成』が演奏されたという記念すべき日で、情緒豊かなワルターの演奏会に対して、
クレンペラーの演奏会は、聳え立つようなスケールと力強さで迫る『英雄』など対照的なものだったそうです。
また、この演奏会を当時、会場で聴いていた作曲家で指揮者の外山雄三氏は、
(レコード芸術 昭和35年8月)
と激賞していました。
モノラル録音ではありますが、響きの純度と演奏の迫真性は色褪せることなく、むしろ現代に聴く意義が増しているとさえ感じられます。
ぜひこの記録に耳を傾けてみてください。
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