オリジナル楽器のよる史上初の全集録音企画として注目されましたが、
全体の約8割、81曲を収録をした企画です。
デジタル録音時代の83年から95年に行われた企画で、
第1番から第75番、第94番、第96番、第100番、第104番、第107番、第108番
が録音されました。
特に名曲が集中している80番以降がないのが残念でなりません。
しかもホグウッドは2014年に亡くなりましたので
レコード史上もっとも残念な中止企画として逆に有名になりました。
ホグウッドのハイドン交響曲集 レコード史に残る中止企画
ホグウッドは、モーツァルト、ベートーヴェンの交響曲全集企画を完成しています。
ホグウッドのスタイルは、毎回時間をかけて調査、
研究をしたうえで入念にセッション録音を行うもので、その完成度の高さは定評があります。
ハイドンも全集企画もホグウッドの2つのハイドンアルバム(第94&第96、第100&第104)と
モーツァルト交響曲全集の成功を受けて1988年からレコーディングが開始されました。
録音会場は、ロンドンのウォルサムストウ・アセンブリー・ホールを中心に、
キングズウェイ・ホールや聖バーナバス教会など複数の場所が使われていて、
そこでの演奏は、ジョン・ダンカーリーやジョナサン・ストークスという
デッカのエンジニアたちが高い水準で収録しました。
ホグウッドのハイドン交響曲集 レコード史の価値
ハイドンの交響曲全集となると全104曲もあり、ビジネスとして成り立つのかということもあり、
現在までアンタル・ドラティ指揮フィルハーモニア・フンガリア、
アダム・フィッシャー指揮オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団、
デニス・ラッセル・デイヴィス&シュトゥットガルト室内管弦楽団の3種類があるだけです。
ホグウッドの全集企画が中止になった理由として、
デッカには、ドラティの全集がすでにあったことも中止理由の一つとなったいます。
ホグウッドの録音を行っていたオワゾリール・レーベルのデッカ傘下だったのでした。
また、録音ごとにフル・プライス3枚組という高額なセットで
リリースしセールスが不調な状態が長く続いていたのと、当時のイギリスが不況だったなど、
中止の理由はいくつか挙げられています。
しかし、途中で終わったとはいえ、ここで聴かれる曲は、
初期作品すべてと中期作品の多くを聴くことが出来るのは、
嬉しいことで、第76番以降がなくても逆にあまり録音されない多くの曲が残されたことは、
レコード史上に大変貴重な存在となります。
ホグウッドのハイドン交響曲集 徹底した方針
ホグウッド自身、優秀な音楽学者で、このハイドン企画においては、
ハイドン研究の第一人者であるケンブリッジ大学のジェイムズ・ウェブスター教授の協力を得て、
奏法や楽器編成、作品解釈などについて徹底的に研究をおこなっています。
僕は、このCD32枚組を入手する前、第100番“軍隊”と第104番“ロンドン”のセットを聴いていて
そのフレッシュで多彩な表情をもつ演奏で、今までのハイドンの演奏とは一線を画する演奏でした。
まとめ
ハイドンの交響曲全集は、その曲の多さで企画として成り立ちにくいものです。
その中でホグウッドの全集が、中止企画になったとはいえ、
81曲が残されたことはレコード史において貴重な財産です。
レコードセールスでもブリュッヘンの演奏などと合わせて
ハイドンの交響曲の古楽器演奏を集めて全集という形でも出ています。
膨大なハイドンの交響曲を比較的短期間のうちにドラティが全集にまとめあげた歴史的力作が1970年頃に録音され(Decca)、その後アダム・フィッシャー(Brilliant Classics)、デニス・ラッセル・デイヴィス(Sony)らが、モダン楽器によって全集録音を成し遂げています。
ホグウッドが全集制作を進めていましたが、8割を録音したところで録音計画が中座してしまい、オリジナル楽器による全集は未だ達成されずにいました。
そこで、ホグウッド指揮による演奏、ブリュッヘン指揮による2つの団体の演奏、そしてダントーネ指揮による最新演奏を含めて、オリジナル楽器による初の全集がここに完成しました。
これはこれで面白いと思います。
コメント