交響曲第4番は、ベートーヴェンの全9曲の交響曲の中では、第1番についで地味な作品かもしれません。
でも、僕は中学生の頃初めて聴いて、前後の”英雄”、”第5番”にない、優美でチャーミングな部分に魅せられて、良く聴きます。
大指揮者の中でも、特にムラヴィンスキー、クレンペラー、朝比奈隆などは、得意としていてコンサートでも多く取り上げているようです。
今日は、ムラヴィンスキーとヨッフムの名演を取り上げます。
ん!?と思われるかもしれませんが、ムラヴィンスキーが、1903年生まれ、ヨッフムが1902年生まれと同世代ということもあり、聴き較べてみたと思います。
ベートーヴェン交響曲第4番変ロ長調
ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)作曲
交響曲第4番変ロ調作品60
楽器編成:弦楽5部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ
1806年、ベートーヴェン36才の時に完成。
ベートーヴェンには珍しく、きわめて短期間のうちに作曲されました。
初演は1807年3月、ロブコヴィッツ候邸における予約演奏会で行われました。
壮大な巨作第三番”英雄”と”第五”の間にあって、比較的叙情味の濃い作風を示します。
ダイナミックスの急激は変化や強力な運動性はベートーヴェンらしいめざましいものがあります。
僕は時に、第一楽章の長い序奏が終わり、主部に向かって盛り上がってゆく部分の迫力や、フィナーレの一気呵成の突進力は、いつもワクワクさせられます。
ベートーヴェン交響曲第4番 ヨッフム&ベルリンフィルハーモニー
Ⅰ(12:47)Adagio-Allegro vivace
Ⅱ(10:27)Andante
Ⅲ(06:27)Menuetto:Allegro vivace
Ⅳ(07:23)Allegro ma non troppo
録音:1954年11月16日~19日 モノラル
オイゲン・ヨッフム指揮
ベルリンフィルハーモニア管弦楽団
オイゲン・ヨッフム(1902-1987))は、僕の好きな指揮者で、CDで聴く彼の演奏からは、ドイツ風の堅実で重厚な中に、人間味溢れる温かさを感じます。
ヨッフムの最初の交響曲全集については以前このブログで取り上げていますのでチェックしてみてください。
↓
ヨッフムのベートーヴェン交響曲全集 フルトヴェングラーの影と温かみ<>
この演奏は幻の演奏と言われていましたが、アリアCDレーベルで、CD-Rながら復刻されています。購入はこちらからどうぞ>>>http://www.aria-cd.com/
さて、幻になったのは理由があり、ヨッフムのベートーヴェン全集を出すため、第4番は60年にステレオで取り直して発売したのでしょう。その他もモノラルはあるんですが、結局契約の問題で4番までになったというのが本当のところと思います。
しかもこの4番は、フルトヴェングラー生前最後のベルリンフィルの録音ということで記念すべき録音です。だから幻になっては困るんですね。
演奏は、重厚にしてヨッフムには珍しく凄みを感じさせる演奏です。
つまりフルトヴェングラーの影が見える演奏と言い換えても良いかと思います。
ベートーヴェン交響曲第4番 ムラヴィンスキー&レニングラードフィルハーモニー
Ⅰ(08:59)Adagio-Allegro vivace
Ⅱ(09:43)Andante
Ⅲ(05:41)Menuetto:Allegro vivace
Ⅳ(06:54)Allegro ma non troppo
録音:1973年4月29日 ステレオ
レニングラードフィルハーモニー大ホールでのライブ録音
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮
レニングラードフィルハーモニア管弦楽団
ムラヴィンスキーは、ベートーヴェンの交響曲でも特に第4番を得意としていたようです。
評論家の宇野功芳氏は、この演奏の約1ヶ月後の5月26日に東京文化会館で行われた初来日公演をベスト演奏として挙げています。
僕は未聴ですが、ほぼ同じ内容と思います。
というのも宇野氏のコメントが、そのままレニングラードのライブにも言えるからです。
全曲を通じ、速い一直線のテンポでストレートに運んだ抽象的、幾何学的な表現だが、その切れ込みの鋭さ、そのニュアンスの微妙な移ろいは筆舌に尽くしがたく、まさに完璧、「透徹」の極みといえよう。とくに終楽章の前進性はとどまるところを知らない。
まとめ
作曲家のロベルト・シューマンは、”英雄”と”第五”の間にあるこの第4交響曲を「二人の北国の巨人の間にはさまれたギリシア美人」だと言いました。
作曲されたのは”英雄”の数年後ですが、形式的には第1番、第2番に近く、シューマンの言うギリシア美人とは、この形式上の古典美を指すものと思います。
その音楽的内容がロマンティックで、豊かな詩想が即興的に流出してきて、ベートーヴェンの9つの交響曲の中でもっとも美しい曲の一つです。
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