こんにちは。
ともやんです。
来年2020年は、ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンの生誕250周年にあたります。
僕がクラシック音楽を聴くようになったのは1970年の中学生の時。
その年は、ベートーヴェン生誕200周年ということで盛り上がっていました。
つまりそれから50年経ったのです。
坊主頭の紅顔の中学生は、62歳のおっさんになりました。
当時と同じ坊主頭ですが、髪がなくなって仕方なく坊主頭にしています。
クラシック音楽を聴き続けてきて、一番の変化は、ソフトの変化と価格の変化。
つまり当時は、LPレコードでしたが、82年にコンパクトディスク(CD)が発売され、現在はネット配信の時代になりました。
また、ソフトの価格は、物価上昇に比べ相対的に安くなり、当時LPレコード1枚2,000円から3,000円でしたが、現在も変わらず、むしろセットやボックスで再販されると1枚あたり100円位まで安くなるものまで出てきました。
また、Amazonやナクソスでは月額定額サービスも出てきました。
簡単に言うと音楽の楽しみ方は、とても多彩になったのです。
ベートーヴェンは不滅 わかりやすく、うるさく、新しい
片山杜秀著『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』という本の中で、ベートーヴェンの音楽を大胆にも3つに要約されています。
それは、
①わかりやすくしようとする
②うるさくしようとする
③新しがる
僕はこの意見に大賛成で、自分がベートーヴェンの音楽に対して感じていたもやもやを見事に解決してくれました。
また、僕の大好きな小説に『モーツァルトは子守唄を歌わない』森雅裕著があります。
第31回江戸川乱歩賞受賞作です。
この小説は、ベートーヴェンが探偵役としてモーツァルトの謎に取り組むというものでベートーヴェンはじめ、弟子のカール・チェルニーやシューベルト、サリエリといった登場人物たちのキャラがとても面白くこの路線を続けてほしかったのですが、短編が少し出て、作者の森氏も作家として大成されていないようでとても残念です。
さて、この小説の初めの方で、ベートーヴェンがハイドンの追悼式を前にサリエリと会うくだりが面白いです。その部分を抜粋してみます。
“苦虫を噛みつぶしていると、アントニオ・サリエリが人をかきわけて、やって来るのが見えた。話しかける気らしい。
私がウィーンに出て来たばかりの頃、師事したこともある宮廷学長である。小柄なイタリア人で、顔つきだけが派手だ。
ひん曲がった鷲鼻に、巨大で、とんがった顎、おそろしいくくぼんだ目に加えて、流行の化粧をしているから、あまり至近距離で向かい合っていると、吹き出してしまうか、腹立たしくなるのかのいずれしかない。
「やあ、ルードヴィッヒ。活躍しているようだね」
仕事のことをいっているらしい。
「今度の演奏会に新曲をやりますよ」
「ほう。交響曲かね?」
「いえ。ピアノ協奏曲です」
「また例によって、がしゃがしゃ弾きまくる気かね?」
どうやら、今日は腹立たしくなる方らしい。”
この新曲のピアノ協奏曲というのは、第5番”皇帝”のことで、サリエリが、”また例によって、がしゃがしゃ弾きまくる気かね?”と表現したのは、まことに的を得た指摘と思います。
この小説では、楽聖ベートーヴェンを愛すべき人物として書いていますが、実際のベートーヴェンも才能豊かだが、非常に変わってユニークで、愛すべき人だったと僕は思っています。
ベートーヴェン像を刷新したヘルヴェッヘの名演の名盤
ベートーヴェンは偉大で尊敬すべき人ではありますが、その愛すべき人物だったことを彷彿とさせる演奏があります。
それがヘレヴェッヘ指揮ロイヤル・フランダースフィルの演奏です。
ピリオド楽器による演奏家として名を馳せたヘルヴェッヘが、モダン楽器のオーケストラ、ロイヤル・フランダースフィルを振って、見事に愛すべきベートーヴェン像の音楽を提供してくれました。
第一楽章のオーボエによるカデンツァの自由さ、何と言っても終楽章のティンパニのお祭り騒ぎ。いやその一歩手前で、ぐっと堪えて、ベートーヴェンのうるさくしようという音楽を見事に表現しています。
ちょっと風采の上がらない疲れた中年サラリーマン風の外見(失礼)から想像できない主張を感じて、一気にヘルヴェッヘのファンになってしまいました。
ベートーヴェンの交響曲は全曲録音しているので、他の曲も絶対聴いてみます。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
交響曲第5番 ハ短調 「運命」 Op. 67
Symphony No. 5 in C Minor, Op. 67
1.(06:44) I. Allegro con brio
2.(08:29) II. Andante con moto
3.(04:35) III. Scherzo: Allegro –
4.(10:23) IV. Finale: Allegro
total(30:11)
交響曲第8番 ヘ長調 Op. 93
Symphony No. 8 in F Major, Op. 93
5.(08:32) I. Allegro vivace e con brio
6.(03:48) II. Allegro scherzando
7.(04:20) III. Tempo di minuetto
8.(07:00) IV. Allegro molto
total(23:40)
ロイヤル・フランダース・フィルハーモニー管弦楽団 – Royal Flemish Philharmonic Orchestra
フィリップ・ヘレヴェッヘ – Philippe Herreweghe (指揮)
録音: June 2007
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」, 第8番(ロイヤル・フランダース・フィル/ヘレヴェッヘ)
運命の動機が響き渡る――。ヘレヴェッヘのピリオド・アプローチによって新たなるベートーヴェンが誕生する!
演奏はもちろん前作と同じく手兵ロイヤル・フランダース・フィル。ヘレヴェッヘは1997 年からロイヤル・フランダース・フィルの音楽監督を務めており、2005 年に開催されたベートーヴェンの交響曲全曲による来日公演は記憶に新しいところ。今回ペンタトーンからリリースされる第5 番&第8 番の2 曲は、今年2007 年の6 月にオランダ・アインホーフェンのフリッツ・フィリップス・ミュージックセンターで収録された最新録音。1997 年の音楽監督就任から10 年という歳月が流れており、ヘレヴェッヘとロイヤル・フランダース・フィルの関係は以前とは比べ物にならないレベルにまで成熟していると見て間違いないだろう。ヘレヴェッヘが全身全霊を注ぐベートーヴェンへの挑戦の新たな成果がここに証明される。
最後に
自分もそうですが、良くも飽きずに50年以上に渡ってベートーヴェンを聴き続けてきたなと思います。
それは音楽家によって、それぞれのベートーヴェン像が表現されてきたからだと思います。
コンサートなどの実演は、音となって人々の記憶に留められて消えていきます。
だからベートーヴェンの時代の音楽は、当時の人々の記憶の中にしかなく、現代では残された楽譜から想像するしかありません。
ちょうど化石から恐竜像を復元するみたいなことです。
だから様な研究がされ、多くの試みがされているのだと思います。
ベートーヴェンは永遠ですが、演奏の試みも永遠に続くと思います。
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