こんにちは、
ともやんです。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲5曲の中でも第5番「皇帝」は特別な作品です。
当時ピアノの演奏会で華麗なテクニックで他を圧倒していたと言われるベートーヴェンらしい、華やかなピアノと豪放な管弦楽との組み合わせて、ピアノ協奏曲史上のまさに「皇帝」とも言うべき作品です。
僕の大好きな小説『モーツァルトは子守唄を歌わない』森雅裕著の中で、今度ピアノ協奏曲の新曲(多分皇帝)を披露しようというベートーヴェンに対して、サリエリが「またガシャガシャ弾く曲ですか」と皮肉を込めて言っているシーンがあり笑えます。
モーツァルトと比較すれば、音数はベートーヴェンの方が多そうだし、デリカシーのないテクニックだけのピアニストにかかれば、一つ間違えば騒音となってしまいます。
ツィメルマン ラトル&ロンドン響 ベートーヴェン皇帝に疑問
さて、先日予約していたツィメルマンとラトル&ロンドン響の全集が届いて早速全て聴きました。
2020年12月の最新録音で内容も充実しており満足なものでした。
しかし、ただ欲を言えばラトルの指揮が今一つ好きになれないのです。
何というか、表現に気を配っているのはわかるのですが、何か小手先だけという印象を受けてしまうのです。
ツィメルマンの卓越した繊細にして強靭なピアノ、そしてその情熱にはいつも感動させられます。本当、ツィメルマンのピアノに文句のつけようがありません。
そして聖ルーク教会を使ってのロンドン交響楽団の響きも素晴らしいです。
でも、ラトルがなぁ。。。
ラトルの表現への疑問は特に皇帝の第一楽章で感じました。
冒頭のピアノ独奏に続く管弦楽の部分で抑制を効かせ過ぎているように感じるのです。
ルービンシュタイン&バレンボイム ベートーヴェン 皇帝
そんな中、ルービンシュタインが、1975年に88歳でバレンボイム&ロンドン・フィルと組んで録音した「皇帝」をようやく聴きました。
この演奏は我が敬愛する宇野功芳氏が、全くぶれずにずっとこの録音を推しているのです。
宇野氏は、ブレにくい評論家ですが、やはり時の流れで新しい録音も出てきて、以前推薦していた録音の評価を後退させることはあります。これは仕方ないことだと思うのですが、この「皇帝」に限っては一貫してルービンシュタイン&バレンボイム盤推しです。
「僕の選んだベートーヴェンの名盤」(1981年)
「クラシックの名曲・名盤」(1989年)
「クラシック 人生の100枚」(2003年)
「ベートーヴェン 不滅の音楽を聴く」(2013年)
と30年以上に渡ってルービンシュタイン&バレンボイム盤推しで、「皇帝」に関してはこの録音があれば他はいらないと言い切るほどです。
実際聴いて、その泰然とした風格に圧倒されました。テンポは遅めで一音一音大切にしながら弾いているのが伝わってきます。
バレンボイムの指揮も見事にルービンシュタインのピアノを支えています。
ただ個人的には、ルービンシュタイン盤は好きな演奏ではありますが、宇野さんほど極端ではありません。上記のツィメルマンもラトルの指揮に文句を付けましたが、全体的には抑制を聴かせた素晴らしいものです。
ただ夢が叶うなら、ぜひアルゲリッチのピアノで聴きたいです。
オケはムーティ指揮のウィーンフィル。
アルゲリッチは、どういうわけか皇帝の録音は残していません。
しかもベートーヴェンのピアノ協奏曲では、第1番と第2番は複数ありますが、第3番は1つだけ。第4番と第5番に関しては見つけることが出来ません。
アルゲリッチは、ブラームスの協奏曲の録音もないので、これは意識して避けているとしか思えません。
その辺の事情はわかりませんが、ぜひ、ベートーヴェンの第4番と第5番「皇帝」そしてブラームスの2つの協奏曲を録音して欲しいです。
ルービンシュタイン バレンボイム&ロンドンフィル ベートーヴェン 皇帝
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 「皇帝」 Op. 73
Piano Concerto No. 5 in E-Flat Major, Op. 73, “Emperor”
1.(20:14) I. Allegro
2.(08:24) II. Adagio un poco mosso
3.(09:46) III. Rondo: Allegro
total(38:24)
アルトゥール・ルービンシュタイン – Arthur Rubinstein (ピアノ)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 – London Philharmonic Orchestra
ダニエル・バレンボイム – Daniel Barenboim (指揮)
録音:1975年3月10&11日 ロンドン、キングスウェイ・ホール
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」&第4番 アルトゥール・ルービンシュタイン 、 ダニエル・バレンボイム 、 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
齢85歳を超えたこのピアニストにテクニックの衰えはほとんどなく、持ち前の輝かしい音色と逞しいタッチに穏やかな表情を加えながら、豊かな音楽を作り出してゆきます。
「皇帝」の第1・第3楽章のスケールの大きさはもちろん、第2楽章の深々とした旋律のなんという美しさ。
70余年にもわたるキャリアの末に辿り着いた巨匠の芸術のすべてが、ここにあります。若きバレンボイムの指揮も堂々としており、現在の彼を彷彿とさせます。
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