こんにちは、
ともやんです。
カール・ツェルニー – Carl Czerny (1791-1857)というとピアノを習ったことのある方ならなじみ深いと思いますが、素人にもピアノの練習曲の作曲家とピンときます。
またベートーヴェンの弟子でもありましたし、僕の大好きな小説『モーツァルトは子守歌を歌わない』森雅裕著でも、ベートーヴェンの弟子としてまた生意気盛りな少年として大活躍します。
そんなツェルニーのノクターン(夜想曲)の作品集がリリースされます。
一応明日の発売のようですが、僕は逸早く聴くことが出来ましたのでご紹介します。
そもそもノクターンとは
ノクターンというと、すぐショパン(1810-1849)を思い出します。ショパンのロマンティックにして切ない雰囲気が思い出されます。
実際指揮者・ピアニスト・古楽器奏者の大井駿氏の説明によると、ノクターンというと、静かで落ち着いた曲が多いイメージがあり、日本語では夜想曲と訳されますが、ノクターンとは、ラテン語のノクトゥルヌ(nocturnus)という言葉からきたフランス語で、「夜の」という意味です(英語のnocturnalと同義)、とのことです。
大井氏は続けてノクターンの成り立ちも説明されていますので、要約して簡単に記します。
ノクターンというジャンルを作ったのは、アイルランドで生まれ、イギリスで育ったジョン・フィールド(1782-1837)というピアニスト。
フィールドの時代のイギリスは、ちょうど産業革命の時代で、新型のピアノの製造も盛んに行われたそうです。そこでフィールドは、ピアノ制作をしていたクレメンティと共に、新型ピアノのデモ演奏をしてヨーロッパ中を回っていました。
新型ピアノは、それ以前のものに比べて美しい弱音やレガートができるようになっていました。その良さを活かす作品として、静かな曲調で長いメロディを取り込んだノクターンを作曲したのです。
そしてこの曲調がヨーロッパ各地でヒットし、のちのピアニストや作曲家に影響を与えて行ったというわけです。
フィールドより9歳年下のツェルニーしかり、28歳年下のショパンしかり。
ツェルニーの人物像に光が
日本では、ツェルニーはもっぱら練習曲の作曲家というイメージが強いですが、ベートーヴェンの弟子にしてリストの師匠。
近年はチェルニーの研究も進み、ツェルニーに人物像に光が当たるようになりました。
彼は66年の生涯に、1,000曲以上の作品を創り、近年では宗教曲やオルガン曲も演奏されるようになり、注目されるようになってきたのです。
収録されている夜想曲は、作品番号から中期の作品と思われる「8つの夜想曲 Op. 368」は、美しい旋律を湛えながらも、それほど技巧を必要としないこれらの作品は当時の中流階級の家庭での演奏に適したエレガントな佇まいを持っています。
一方後期の作品「さまざまな性格のロマンティックな8つの夜想曲 Op. 604」はOp. 368に比べ、リストの作品ほどではないものの、はるかに上級者向けに書かれており、感情表現も豊かになっています。
ベートーヴェンのソナタ楽章を思わせるエネルギッシュな曲から、ヨハン・シュトラウス風のワルツや、ショパンの練習曲「革命」を彷彿させるドラマティックな曲など、単なる夜想曲の括りには収めきれないほどの多彩な曲集になっています。
演奏は古典派からロマン派作品を得意とするベルギーのピアニスト、ロベルテ・マムー。シューマンやモーツァルト、ジョン・フィールド作品の録音が高く評価されています。
おすすめのCDです。ぜひ聴いてみてください!
ツェルニー 夜想曲集 Opp. 368, 537, 604
カール・ツェルニー – Carl Czerny (1791-1857)
8つの夜想曲 Op. 368 – 第1番 ホ長調
1.(04:13) 8 Nocturnes, Op. 368: No. 1 in E Major
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8つの夜想曲 Op. 368 – 第2番 変ホ長調
2.(02:58) 8 Nocturnes, Op. 368: No. 2 in E-Flat Major
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8つの夜想曲 Op. 368 – 第3番 変イ長調
3.(03:56) 8 Nocturnes, Op. 368: No. 3 in A-Flat Major
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8つの夜想曲 Op. 368 – 第4番 変ニ長調
4.(03:56) 8 Nocturnes, Op. 368: No. 4 in D-Flat Major
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8つの夜想曲 Op. 368 – 第5番 ホ長調
5.(03:16) 8 Nocturnes, Op. 368: No. 5 in E Major
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8つの夜想曲 Op. 368 – 第6番 イ短調
6.(03:12) 8 Nocturnes, Op. 368: No. 6 in A Minor
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8つの夜想曲 Op. 368 – 第7番 ロ短調(ロンドーの形式で)
7.(06:26) 8 Nocturnes, Op. 368: No. 7 in B Minor, en forme de rondeau
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8つの夜想曲 Op. 368 – 第8番 変ロ長調
8.(02:57) 8 Nocturnes, Op. 368: No. 8 in B-Flat Major
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シュトラウスのお気に入りのモティーフ「アレクサンドラのワルツ」による感傷的で華麗な夜想曲 変イ長調 Op. 537
9.(08:46) Nocturne sentimental et brillant sur la Valse Alexandra, un motif favori de Strauss in A-Flat Major, Op. 537
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異なる性格の8つの夜想曲 Op. 604 – 第1番 敬意
10.(06:16) 8 Nocturnes romantiques de differents caracteres, Op. 604: No. 1. L’hommage
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異なる性格の8つの夜想曲 Op. 604 – 第2番 願望
11.(04:42) 8 Nocturnes romantiques de differents caracteres, Op. 604: No. 2. Le desir
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異なる性格の8つの夜想曲 Op. 604 – 第3番 確信
12.(05:52) 8 Nocturnes romantiques de differents caracteres, Op. 604: No. 3. La persuasion
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異なる性格の8つの夜想曲 Op. 604 – 第4番 怒り
13.(02:57) 8 Nocturnes romantiques de differents caracteres, Op. 604: No. 4. La colere
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異なる性格の8つの夜想曲 Op. 604 – 第5番 弁解
14.(04:30) 8 Nocturnes romantiques de differents caracteres, Op. 604: No. 5. L’excuse
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異なる性格の8つの夜想曲 Op. 604 – 第6番 慰め
15.(07:03) 8 Nocturnes romantiques de differents caracteres, Op. 604: No. 6. La consolation
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異なる性格の8つの夜想曲 Op. 604 – 第7番 瞑想
16.(06:54) 8 Nocturnes romantiques de differents caracteres, Op. 604: No. 7. La meditation
異なる性格の8つの夜想曲 Op. 604 – 第8番 喜び
17.(04:31) 8 Nocturnes romantiques de differents caracteres, Op. 604: No. 8. La joie
ロベルテ・マムー – Roberte Mamou (ピアノ)
録音: 24-25 August 2022, Dada Studios, Brussels, Belgium
あのツェルニーのノクターン(夜想曲)! ロマンティックで創造性豊かなOp. 604は特に注目!
日本ではもっぱら「練習曲の作曲家」として知られているカール・ツェルニー。しかし最近では研究も進み、ベートーヴェンの弟子であり、リストの師としての人物像に光があたるようになってきました。66年の生涯に、未出版も含め1000曲以上の作品を残し(作品番号付きは861作)ており、近年では宗教曲やオルガン作品なども演奏される機会があるなど、注目が高まっています。
このアルバムに収録されているのは、ツェルニーの一連の夜想曲。このジャンルの先駆者としてはアイルランド出身の作曲家ジョン・フィールド(1782-1837)が知られており、その作品の柔らかく気怠い雰囲気は、彼の「8つの夜想曲 Op. 368」にも受け継がれています。美しい旋律を湛えながらも、それほど技巧を必要としないこれらの作品は当時の中流階級の家庭での演奏に適したエレガントな佇まいを持っています。
トラック9『シュトラウスのお気に入りのモティーフ「アレクサンドラのワルツ」による感傷的で華麗な夜想曲』は、ロシアのニコライ1世の皇后アレクサンドラ・フョードロヴナにヨハン・シュトラウス1世が捧げたワルツの第2主題をモティーフにした作品。穏やかな曲調で始まるものの「華麗な」のタイトルとおり中間部では華やかな曲調に変化します。
1843年に出版された「さまざまな性格のロマンティックな8つの夜想曲 Op. 604」はOp. 368に比べ、リストの作品ほどではないものの、はるかに上級者向けに書かれており、感情表現も豊かになっています。ベートーヴェンのソナタ楽章を思わせるエネルギッシュな曲から、ヨハン・シュトラウス風のワルツや、ショパンの練習曲「革命」を彷彿させるドラマティックな曲など、単なる夜想曲の括りには収めきれないほどの多彩な曲集になっています。
演奏は古典派からロマン派作品を得意とするベルギーのピアニスト、ロベルテ・マムー。シューマンやモーツァルト、ジョン・フィールド作品の録音が高く評価されています。※国内仕様盤には音楽学者でツェルニーの研究をしている中川航氏の解説が付属します。
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