こんにちは、
ともやんです。
第二次大戦中に本拠地ゲヴァントハウスを空襲で失ったライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦管弦楽団の楽員たちは、戦後、会場を間借りしながら演奏会を再開していきました。
そうした楽団の最も辛い時期に音楽監督を引き受けたのが、フランツ・コンビチュニーでした。
※ライプツィヒ
伝統的なカペルマイスターとしての叩き上げであったコンビチュニーは、その薫陶によってオーケストラを見事に建て直していきました。
今回紹介する演奏は、ライプツィヒと同様、戦争で大打撃を受けながらも復興したヨーロッパ最古のオーケストラとのものです。
コンヴィチュニーの名盤 ベートーヴェン交響曲第3番“英雄”
ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
交響曲第3番 変ホ長調作品55「エロイカ」
フランツ・コンヴィチュニー指揮
シュターツカペレ・ドレスデン
第1楽章:Allegro con brio 16:14
第2楽章:Marcia funebre. Adagio assai 17:42
第3楽章:Scherzo.Allegro vivace 6:21
第4楽章:Finale.Allegro molto 11:52
1954年11月
フランツ・コンヴィチュニー「エロイカ」 フランツ・コンヴィチュニー 、 シュターツカペレ・ドレスデン
コンビチュニーの名盤 朝比奈隆を唸らせた男の“エロイカ”
朝比奈隆氏は、生前「死ぬまでにコンヴィチュニーのように指揮したい」と語っていたそうですが、あの骨太な演奏をする朝比奈氏にして、その雄渾な演奏で魅了させたコンヴィチュニーはまさに東ドイツの巨神でした。
コンヴィチュニーには有名なゲヴァントハウス管とのベートーヴェン全集がありますが、“エロイカ”に関してはこのシュターツカペレとの演奏に圧倒されます。
第1楽章から逞しく雄渾な響きは、最近観た「キングコング 髑髏島の鬼神」のキングコングの様に逞しく、頼もしく、ゴツゴツと武骨でそして温かさも感じさせる演奏は、胸がすく思いです。
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団を支えた男たち
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は、1743年に世界で初めて市民階級による自主運営オーケストラとし発足しました。
1743年というと今から270年以上昔で、モーツァルトもベートーヴェンも生まれる前。
ハイドンでさえ幼児の頃。
大バッハやヘンデルが58才で音楽界の巨匠でしたが、すでに晩年に差し掛かっていた時代。
日本では、徳川幕府8代将軍吉宗の時代でした。
当然民主主義の時代ではなく、そんな中で市民階級の自主運営のオーケストラが出来るなんて当時のドイツはなんと進んでいたことか。
その後、と言っても設立から90年以上経った1835年にメンデルスゾーンがカペルマイスター(楽長)に就任し、技術的にも楽員の年金制度の創設など待遇面での基盤が固まり、大きく飛躍しました。
僕は最近メンデルスゾーンを高く評価するになっています。
もちろん曲の良さもそうですが、現代のオーケストラ運営やコンサートのスタイルの基礎を気づいた人だと思うからです。
若くして亡くなったし、肖像画も優しい感じですが、ユダヤ人で銀行家の家に生まれた関係か、経済にも明るかったのでしょう。
20世紀になると、ニキシュ、フルトヴェングラー、ワルター、アーベントロートという20世紀前半を席巻した巨匠たちが歴任します。
そして、大戦後にアルベルトの後任として1949年にフランツ・コンヴィチュニーが、カペルマイスターに就任しました。
コンヴィチュニーの尽力により、往年の輝かしい実績の再建と復活を果たしのでした。
コンヴィチュニーは、残念ながら1962年に61才と言う働き盛りの時にベオグラードで客死しました。
亡くなる前年に初来日も果たしていたので、惜しい人を亡くして悲嘆にくれた往年のクラシックファンも多かったでしょう。
コンヴィチュニー 伝統を再建し復活させた名匠
そんな経歴のコンヴィチュニーですから、やわな演奏なんてないです。
このドレスデン・シュターツカペレとの“エロイカ”も聴衆に全く迎合することなく、まさに演奏に命を賭けた男を感じさせるこの名演です。
80年以降の古楽器の透明感のある演奏とは全く異なる、古色蒼然とした響きに、もうこんな演奏を聴かせてくる人もいないんだな、
特に朝比奈氏が亡くなってからはと寂しくなるのも仕方ないですね。
ここまで正攻法の真っ向勝負で、小細工を排した演奏は、トスカニーニ、フルトヴェングラー、ワルターと並んでも引けを取らないし、
唯一、クナパーツブッシュのコジラのような演奏に対抗できる凄演です。
録音もモノラルですが、ステレオか?と感じさせるほど広がりがあり、聴いていて感銘を損ねることはありません。
ベートーヴェン、そして“エロイカ”を愛する人は必聴の名演です。
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