こんにちは、
ともやんです。
今年はヨハネス・ブラームス(1833-1897)の生誕190年の年。
この歳ばかりと連日ブラームスの作品を聴いています。
ブラームスの作品は渋く華やか曲は少なく、深沈としてセンチメンタルなものが多いです。それはそれでいいのですが、そればっかりというのも気が沈みます。
しかし、最近はそんな時を過ごすのもたまにはいいかと聴き進めています。
今日は、晩年の一連のクラリネット作品からクラリネット三重奏曲を聴きました。
ブラームス クラリネット三重奏曲 奇跡の作品
1891年58歳になったブラームスは、遺言書を作成し、自分の財産を管理している出版者のジムロックに送っています。
前々から自分の身辺を整理したいと考えていたようで、今風に言えば終活ですね。そして創作意欲も落ちて来たので引退も考えるようになっていました。
60歳直前のブラームスは、私設秘書に次のような手紙を送っています。
「最近、交響曲を含め、いろいろなものに着手したがどれもうまく行かない。自分はもう年を取り過ぎたと思う。自分の生涯は勤勉なもので、十分に達成されたと思う。人に迷惑をかけない年齢になり、いまや平和を楽しむことができると思う。」
と言った内容でした。
名誉もお金も手にして、これからは余生を楽しもうかという心境を感じます。
そんな時、マイニンゲンを訪れた時に知り合ったのが、宮廷楽団のクラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトでした。
彼のクラリネット演奏に感銘を受けたブラームスは、早速クララに「ミュールフェルト以上に美しくクラリネットを吹く人間はいません」と手紙を書いているほどです。
そしてブラームスは、ミュールフェルトから霊感を受け、クラリネット三重奏曲、五重奏曲、そして2つのソナタを作曲したのです。
ミュールフェルトとの出会いは、すでに引退も考えていたブラームスの創作意欲に火をつけ、それによって生み出されたクラリネットの作品は、まさに奇跡とも言えるものです。
磯部周平と仲間たちの名演
楽器が出来ることは素晴らしいことだなと思います。
言葉が通じなくても、楽譜を介して同じ作品を演奏するのは、言葉以上に心が通い合うことだと思います。
漫画家・文筆家のヤマザキマリさんは、学者の夫とまだ未成年の息子を連れて、いろんな国で生活しましたが、そんな生活に疑問を呈したのが息子さんだったそうです。
頼むから世界転校は勘弁してくれうというのです。つまり国が違えば、言葉もそして歴史も学び直さなければ行けないのです。
そこで息子さんはアメリカに留まり、母たちは好きな所へ行ってくださいと言ったそうです。
その中で息子さんは、クローバルな数学が強くなり、またチェロができたことでどこに行ってもすぐ仲間ができたそうです。楽器が出来たことが強みになったという例ですね。
今回聴いたのは、昨日のソナタに続いて磯部周平さんが、ピアノの岡崎悦子さんにチェロの藤森亮一さんを加えて演奏した三重奏曲。
磯部周平さんとその仲間たちとの気の合った演奏が聴きものです。
磯部周平 ブラームス クラリネット三重奏曲
ヨハネス・ブラームス – Johannes Brahms (1833-1897)
クラリネット三重奏曲 イ短調 Op. 114
Trio in A Minor, Op. 114
1.(07:48) I. Allegro
2.(07:02) II. Adagio
3.(04:26) III. Andantino grazioso
4.(04:30) IV. Allegro
total(23:46)
磯部周平 – Shuhei Isobe (クラリネット)
藤森亮一 – Ryoichi Fujimori (チェロ)
岡崎悦子 – Etsuko Okazaki (ピアノ)
録音:ライヴ(2003年11月25日紀尾井ホール)音源使用
豪華なメンバー、有りそうで無い、クラリネット室内楽作品集
我が国を代表するクラリネット奏者で作曲家、指揮、古典研究の分野でも活躍する磯部周平を中心に、ピアノ界の重鎮、岡崎悦子と、モルゴーア・クァルテットがコラボした、滅多にない豪華な組み合わせ。
ソナタ、トリオ、五重奏と、古典から近代のクラリネット室内楽の名作が揃ったプログラムはそう多くは無く、興味深い一枚と言えます。編成が変わる毎に変化する個性溢れる響きの変化と、名手揃いならではの精緻なアンサンブルは聴き所。
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