こんにちは、
ともやんです。
クレンペラーの偉大さを証明するとされる、彼の評伝、「クレンペラー指揮者の本懐」シュテファン・シュトンポア編 野口剛夫訳には、完全ディスコグラフィーが掲載されていますが、ブラームス交響曲第1番が掲載されているのは3種類だけです。
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でも、僕の手元には4種類があり、本には2番目のフランス国立菅との演奏が記載されていません。
僕のライブラリーの方が、勝ったなと少し自慢したくなる気分です。
ブラームスの交響曲第1番というと名曲中の名曲で、
実際のコンサートでも、もっとも多く演奏されている曲のひとつです。
何年か前の音楽雑誌のアンケートで、たしかコンサートで1番聴きたい曲として堂々の第1位を獲得していたと記憶します。
まあ、最後の盛り上がりと終わり方なら、ブラボーの一言も掛けたくなる曲ではありますね。
さて、クレンペラーの指揮では、残されている録音が4種類と、彼のキャリアからすると少ないような気がします。
ちなみに彼と同年代でしかも早く他界したフルトヴェングラーでは、10種類も残されています。
クレンペラーのブラームス『第1番』の録音記録をみて残念なのは、60年代以降、録音がないということです。
録音も含めて、クレンペラーの名盤と言われるものは、60年以降に多くあります。
例えば、ウィーンフィルあたりと演奏していれば、ベートーヴェンの第4番、第5番の名演に匹敵する録音が残されていたのでは、と思わずにはいられません。
クレンペラーのブラームス交響曲第1番の録音
クレンペラーがブラームス交響曲第1番の録音をまとめてみると以下のようになります。
28年のクロル歌劇場時代と50年代中盤のクレンペラー70歳前後に集中しています。
先にも書きましたが、名曲だけに60年代にも録音を残しておいてほしかったのですが、残念です。
クレンペラーのブラームス『交響曲第1番ハ短調』の録音
1928年02月03日 ベルリン国立歌劇場管弦楽団
1954年09月17日 フランス国立放送管弦楽団(ライブ)
1955年10月17日 ケルン放送交響楽団
1956年10月29日,31日, フィルハーモニア管弦楽団
11月1日,1957年3月28-29日
クレンペラーは、50年代にもいろいろあり、51年には、モントリオール空港でタラップから転落して左大腿骨頸部ほか数か所を複雑骨折。
回復には時間がかかるため長期の入院。
翌52年には回復し、ウォルター・レッグのEMIと契約しますが、ハンガリーで働いていたことやなぜかナチ疑惑まで掛けられて、帰化していたアメリカのパスポートの更新拒否という処分を受けるという始末、出国できなくなってしましました。
その後弁護士を雇い、ようやく53年2月には、6か月という期限付きでしたが、アメリカを出国できるようになりました。
これにより翌54年から58年の秋までの約5年間は、クレンペラーに取って充実した音楽活動を展開することが出来ました。
この頃の録音は、ちょうどモノラルからステレオに移行する過渡期でしたが、60年以降の演奏にはあまり感じられない覇気溢れるものが多く、録音からもクレンペラーの充実度が伝わってきます。
そういう時期のブラームス1番なので、聴きごたえ充分です。
ただ、多少の違いは、54年のフランス国立菅と55年のケルン放送響との演奏は、活気あふれる演奏ですが、56年のフィルハーモニアとのセッション録音は、テンポもゆったりで、後年の冷静なスタイルを先取りしている感があります。
なお、クレンペラーは、モントリオールの大怪我の後は、1955年まで車椅子の生活となり、杖を使って歩けるようになってからも、椅子に座って指揮をしていました。
結果として、1954年以降はかつてのような快速テンポは影を潜め、その芸風は冷静なコントロールの効いたバランスの良いスタイルに変化しています。
そのため、スピード感や興奮と引き換えに、力強さや緊張感のいっそうの向上が認められ、造形的な打ち出しの強さも比類が無いという、まさにベストと思われる状態に到達しました。
クレンペラー指揮ブラームス交響曲第1番の鑑賞
それでは、4つの演奏を聴いた感想を記したいと思います。
1928年43歳、ベルリン・クロル歌劇場時代
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)
交響曲第1番 ハ短調 Op. 68
Symphony No. 1 in C Minor, Op. 68
Ⅰ(12:58)Un poco sostenuto – Allegro
Ⅱ(09:45)Andante sostenuto
Ⅲ(04:13)Un poco allegretto e grazioso
Ⅳ(14:47)Adagio – Piu andante – Allegro non troppo ma con brio
ベルリン国立歌劇場管弦楽団 – Berlin State Opera Orchestra
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (指揮)
録音:1928年2月3日
この頃は、クロル歌劇場で現代音楽を積極的に取り上げていた頃です。
1928年という今から90年前の録音なので、大丈夫かなと思いながら聴きだしましたが、なかなか悪くない音質で、鑑賞には十分耐えられる状態です。
意外にもゆったりした序奏から入りますが、主部からはドライで素っ気ない感じの演奏なります。
でも第2楽章では、その後の3つの演奏よりも演奏時間が長く、ロマンティックな表現になっているのが面白いです。
第3楽章以降は、第1楽章の即物的な感じが戻てきますが、後年に演奏に比べテンポの動きが多く、速めの部分は、素っ気なく、遅めの部分は十分に減速してというメリハリ感があります。
有名な終楽章の旋律もたっぷり聴かせるような演出をしています。
しかし、その後はせかせかしたテンポで進めたりと後年にない緩急自在な感じがあります。
1954年69歳、フランス国立放送管弦楽団と
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)
交響曲第1番 ハ短調 Op. 68
Symphony No. 1 in C Minor, Op. 68
Ⅰ(13:30)Un poco sostenuto – Allegro
Ⅱ(08:49)Andante sostenuto
Ⅲ(04:24)Un poco allegretto e grazioso
Ⅳ(15:29)Adagio – Piu andante – Allegro non troppo ma con brio
フランス国立放送管弦楽団 – French National Radio Orchestra
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (指揮)
録音:1954年9月17日
珍しい、フランスのオーケストラとの録音で、ライブということもあり、終楽章での追い込みと盛り上がりは1番です。
なお、このオーケストラとは、この後リハーサルの条件の折り合いが合わず、以降客演はしなくなったそうです。
1955年70歳、ケルン放送交響楽団と
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)
交響曲第1番 ハ短調 Op. 68
Symphony No. 1 in C Minor, Op. 68
Ⅰ(13:07)Un poco sostenuto – Allegro
Ⅱ(08:34)Andante sostenuto
Ⅲ(04:27)Un poco allegretto e grazioso
Ⅳ(15:36)Adagio – Piu andante – Allegro non troppo ma con brio
ケルン放送交響楽団 – Kolner Rundfunk Sinfonie Orchestrer
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (指揮)
録音:1955年10月17日
記録をみると54年から58年に掛けて、ケルン放送響とは、良い関係で毎年客演していました。
また、ケルン放送響とは相性も良かったようで名演が多く残されています。
録音はモノラルながら情報量も多く、僕はクレンペラー指揮のブラームスの1番では、一番好きな演奏です。
CDからの情報では、録音日が1日だけの記載なので、ライブ録音かなとも思いますが、観客席からの音が確認できないので、よくわかりせん。
ただ、終楽章の途中にクレンペラーの声と思われるものがかすかに聴き取れます。
演奏は、堅固な構成力と、厳しいアプローチと適度な覇気と迫力が加わり、緊張感あふれる演奏になっています。
※このCD72枚組ボックスには、上記フランス国立菅、ケルン放送響との録音およびその他多くの貴重な演奏が録音が収録されています。
1956~57年71歳、フィルハーモニア管と
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)
交響曲第1番 ハ短調 Op. 68
Symphony No. 1 in C Minor, Op. 68
Ⅰ(14:06)Un poco sostenuto – Allegro
Ⅱ(09:25)Andante sostenuto
Ⅲ(04:42)Un poco allegretto e grazioso
Ⅳ(16:00)Adagio – Piu andante – Allegro non troppo ma con brio
フィルハーモニア管弦楽団 – Philharmonia Orchestra
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (指揮)
録音:1956年10月29日,31日,11月1日,1957年3月28-29日
後年、大量の録音を残すことになるフィルハーモニア管とのセッション録音で、ステレオ録音でもあり4つの録音の中で、もっとも音質が良いものです。
全体にテンポの動きが少ない、重厚な足取りの演奏で、ステレオ録音ということもあり、クレンペラーの特徴でもある、細部まで克明に描くというスタイルが良くわかる演奏です。
木管の動きなどもよく聞き取れる演奏です。
ただ、個人的には、冷静な演奏で人ごとのような展開が多少不満で、前年のケルン放送響のような覇気や迫力がほしいと思います。
『クレンペラー / ブラームス: 交響曲集&ドイツ・レクイエム』(限定盤)
※クレンペラー&フィルハーモニア管とのブラームスのステレオ録音が収録されています。
まとめ
クレンペラーほどのキャリアの持ち主なら、ブラームス交響曲第1番ほどの人気曲ならもっと録音を残してほしかったですね。
※ケルン大聖堂
特に何度も書いてしまいますが、60年代にできたらウィーンフィルと残してほしかったです。
ただ、コンサートなどで全く演奏しなかったということはないと思いますので、最晩年のクレンペラーのブラームス1番、未発表音源発見!
なんてニュースが飛び出すことを期待しないで待っています。
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