ここ2週間ほどは、毎日ブルックナーを聴いています。
寝ても覚めてもブルックナー。
通勤時には携帯CDプレーヤーを持ち歩き、
家を出てから会社に着くまで、大体1曲聴き通せるのが嬉しいですね。
さて、1番から聴き始めたけど、やっと3番、4番にやってきました。
ここからが大変。
何と言っても持っているCDが俄然増えてきます。
昨日も、ディスクユニオンの新宿クラシック館に行って、
ブルックナーばかり7枚も購入してしまいました。
でも、大変、大変と言いながら、ブルックナーの素晴らしさを知って
それに浸れるのは嬉しい限りです。
ブルックナーを聴きは始めて50年 浸れる歓び
一昨年亡くなった評論家・宇野功芳氏は、その著書の中で、
今のリスナーは、幸せだ。
ブルックナーを聴こうと思えば、
どれを選べばいいか迷うほど名演のCDがある。
しかも好きな時に好きな名演を聴くことが出来る。
1950年代は、全曲を通して聴くことも出来なかった。
でのそんな中で、ラジオから流れた多分ベームのSP盤の”ロマンティック”を聴いて
なんて素晴らしい音楽なんだろうと感銘を受けた、という内容の文章を書かれています。
僕がクラシック音楽を聴きだした1970年には、
ブルックナーはまだまだマイナーな作曲家で、
僕が愛読していた、志鳥栄八郎著「世界の名曲とレコード」の
ブルックナーの項では、交響曲第4番”ロマンティック”しか、
取り上げられていませんでした。
しかし、さすが志鳥氏は、ブルックナーを偉大は交響曲の作曲家と評価し、
ブルックナーの曲は、自分から飛び込んで行かないとなかなかわからない、
しかし、ひとたび飛び込んでみると、
その長さ、渋さ、自然さは、素晴らしい長所だと気づく、と書かれています。
僕は、この志鳥氏の言葉を素直に受けて、中学3年の72年に、
決心してカラヤン指揮ベルリンフィルのLPを購入しました。
当時既にヨッフムは全曲(第1番~9番)は録音していましたが、
単発で購入するならワルターかカラヤンくらいしか選択肢がなかったように思います。
初めてブルックナーのLPを購入して約50年。
いまもカラヤン指揮ベルリンフィルのLPは、棚の中に眠っていて、
年に1回くらい取り出して聴いたりしています。
そしていま、僕の棚には、ブルックナーのCDは、大きな場所を取ってしかもまだ増えてきています。
その中でなんと言っても聴いてホッとするのが、ヨッフムの旧全集。
なんて言ううんだろう。
ドイツの街角のビヤホールに入って、
ビールとソーセージを頬張った時のような
幸福感とでもいうのでしょうか。
僕は、仕事でドイツのフランクフルトに数回行きましたが、
仕事が終わってよくビアホールに行きました。
がやがやした中で、ビールを飲んて、ソーセージを食べて、
仕事が済んでほっとした気分に浸る。
ヨッフムのブルックナーはそんな気持ちにさせてくれます。
ブルックナー第3交響曲 ヨッフム&バイエルン放送響
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲第3番ニ短調“ワーグナー”(Version:1888/89 Leopold Nowak)
First performance:Vienna 21.12.1890
Ⅰ(20:05)Mehr langsam,Misterioso
Ⅱ(15:18)Adagio,bewegt,quasi andante
Ⅲ(07:15)Ziemlich schnell
Ⅳ(10:37)Allegro
録音:1967年1月
オイゲン・ヨッフム指揮
バイエルン放送交響楽団
ブルックナー第4交響曲 ヨッフム&ベルリンフィル
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲第4番変ホ長調”ロマンティック”(Version:1878/80 Robert Haas)
First performance:Vienna 20.2.1881
Ⅰ(17:44)Bewegt,nicht zu schnell
Ⅱ(16:46)Andante,quasi Allegretto
Ⅲ(10:11)Scherzo:Bewegt
Ⅲ(20:05)Finale:Bewegt,doch nicht zu schnell
録音:1965年6月
オイゲン・ヨッフム指揮
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
僕が初めて聴いたブルックナーは、この第4交響曲”ロマンティック”でした。
高校生の時だから、もう50年近く前。
だからブルックナーは、いまほどポピュラーではなかったし、
LPといってもワルター、クレンペラー、カラヤンくらいしか出ていなくて、
僕が、最初に購入したLPが、カラヤン&ベルリンフィルでした。
71年、ベルリンのイエスキリスト教会での録音で、
実は、いまでも愛聴盤なんですね。
アヒルの子は、最初に出会った生き物を親と思うらしいですが、
僕は、最初にカラヤンを聴いたものですから、
いきなり高級スポーツカーに乗せられた快感がなかなか忘れなくて、
その後聴いた、ベームなども素朴に感じたくらいでした。
さて、ヨッフム。
速めのテンポで展開する活気あふれる演奏。
なんか、ブルックナーというとゆったりしたテンポでじっくり聴かせるという
イメージがありますが、ヨッフムの演奏は違います。
躍動感があり、聴いていて元気が出てくる演奏ですね。
しかも、全てのヨッフムの演奏に言えますが、人間的な温かみがあります。
指揮者の故岩城宏之氏がその著書の中で、
ブルックナーの演奏が終わったヨッフムが、楽団員たちとわいわい言いながら、
歓びを表現して、ヨッフムのステージ衣装を着替えさせようとしている、
ヨッフムの奥さんを困らせていた。
その姿が母親を困らせる男の子のようで、
ヨッフムの人柄に惚れこんでしまった、と書いていました。
そして岩城氏は、ブルックナーを聴くときは、
真っ先にヨッフムの演奏を聴くとも書いていました。
だからヨッフムの演奏から感じるのは、
フルトヴェングラーのような悲壮感でもなく、
カラヤンの豪華さでもなく、クレンペラーの厳しさでもなく、
音楽をする悦びなんですね。
だからヨッフムの録音からは、
そんなヨッフムの強い思いがぐぐっと感じてしまうのです。
まとめ
ここ2週間ほどは、毎日ブルックナーです。
第1番から始めて、いろんな指揮者の演奏を聴いてきました。
名盤の誉れの高い、ヨッフムの新旧2種類の全集や、ティントナーの渋い演奏、
コンビチュニーの剛毅な演奏、カラヤンの華麗な演奏、などなど、
その中でヨッフムは、ドイツの伝統的な家庭料理のような安心感あります。
さあ、これから中期から後期の巨峰に臨むわけで、
クナッパーツブッシュ、クレンペラー、などが峰々が遥かに見えます。
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