こんにちは、
ともやんです。
朝比奈隆&大阪フィルハーモニー交響楽団によるブルックナー交響曲第7番のLP化です。
しかも1975年10月12日の大阪フィルのヨーロッパツアーで、ブルックナーの故郷、聖フロリアン教会で行われた公演のライブ録音盤です。
僕は、1979年にビクターから発売された2枚組のLPを持っています。
ただ、なんと言っても残念なのが、楽章間の自然発生的な拍手や終演後の6分余りも続く拍手が全てカットされていることです。
しかし、今回Altusは、カットされた部分も全て収録した完全収録版での発売です。
朝比奈隆 やっぱり70年代が最高!?
僕は、80年代の後半から90年代の初めに掛けて何度か、朝比奈さんのコンサートに行きました。
東京で聴いた関係で、手兵の大阪フィルではなく、どれも東京のオーケストラでした。
そして当時は既に大いなるカリスマ性を持ち、ファンからも偶像化されていた節がありますが、正直に言えば、それほど感動したことがありません。
ただ、演奏が終わった後の熱狂的な観客の拍手や喝采は、幸せな音楽人生を歩んで来られたなと感じたものです。
当時は、僕の鑑賞力が足りないのかな、と思っていました。特にブルックナーに関しては、まだ聴き込んでいなかったものですから。
しかし、CDで70年代から90年代のいくつかの演奏を聴き比べると、やはり僕の耳はしっかり機能していたことがわかります。
それの裏付けとなったのは、98年発売された『名指揮者120人のコレを聴け!』で、朝比奈さんの項を担当された喜多見慧氏のコメントです。
喜多見氏は、1956年生まれと僕と同世代で、当時はレコード会社勤務の方でした。
喜多見氏の観察では、70年代から80年代前半は、綿密なリハーサルの割には、本番では、細部に拘らず大づかみに音楽を組み立てていく流儀が、80年代中盤以降は、時代の流れとしての「細部へのこだわりと洗練への指向」に寄せられて行っていた感じがある、と見ていました。
実は、朝比奈さんに限らず、近年のモダン楽器を使っての演奏が面白くないのは、これだと思っていたのです。これはまさにカラヤンの流儀だったのではないかと思うのです。
例えば、昨年ウィーンフィルとベートーヴェンの交響曲全集を録音したネルソンスの演奏が、いまひとつ面白くないのは、細部に拘り過ぎているからと僕は考えます。
しかし、朝比奈さんも90年代以降は、自由な発想と新しい発見をしていこうという意欲を取り戻したようです。
まさにCDで聴く朝比奈さんもその傾向を示しています。
ただ、もっともっと朝比奈さんの録音は聴き込んでいきたいと思っています。
朝比奈隆&大阪フィル ブルックナー交響曲第7番 伝説の完全版
アントン・ブルックナー – Anton Bruckner (1824-1896)
交響曲第7番 ホ長調 WAB 107 (1885年稿・ハース版)
Symphony No. 7 in E Major, WAB 107 (original 1885 version, ed. R. Haas)
1.(22:43) I. Allegro moderato
2.(24:55) II. Adagio. Sehr feierlich und sehr langsam
3.(10:03) III. Scherzo: Sehr schnell
4.(21:56) IV. Finale: Bewegt, doch nicht schnell
大阪フィルハーモニー交響楽団 – Osaka Philharmonic Orchestra
朝比奈隆 – Takashi Asahina (指揮)
録音:1975年10月12日 オーストリア 聖フロリアン修道院マルモア・ザール
※各楽章の演奏時間は、僕が所有するビクター盤のものです。
ブルックナー: 交響曲第7番 WAB.107 (ハース版)<完全限定プレス> 朝比奈隆 、 大阪フィルハーモニー交響楽団
ブルックナーの眠る聖地ザンクト・フローリアン修道院での伝説的ライヴ
「朝比奈隆 聖フローリアンのブルックナー」が新マスタリングで
完全収録版ついに初LP化!録音者平澤氏秘蔵のオリジナルマスターテープから初の完全収録で登場。
初出ジャンジャン全集盤特典、ビクター盤でカットされた箇所が見事に復活。契約切れで長らく入手難であった朝比奈隆の代表盤といわれる聖フローリアン修道院での7番がアルトゥスより新マスタリングで完全復活。
うれしい事に初出でのジャンジャン盤特典およびビクター盤でカットされた1楽章演奏後の沈黙と小鳥の鳴き声が聞こえた後、演奏のあまりのスケール感に打たれた聴衆が自然発生的にじわじわ拍手が湧き上がる箇所も復活。
今まで文献のみで語られた伝説の拍手ですが、こうやって完全収録盤で聞きなおしてみますと、曲を知らないが故の事故的拍手などでなく、巷間語られてきたように演奏の迫真に打たれた聴衆の自然発生的拍手であったことが分かります。
また終演後の感動を伝える拍手も6分!収録。また宇野功芳氏が神の恩寵と称える2楽章演奏後に奇跡的聞こえてきた5時の修道院の鐘も万全です。音質はやわらかで7秒の見事な残響が美しくオーケストラは広大になりわたります。
ちなみに当日演奏会にはノヴァーク版のノヴァーク教授も臨席、「すばらしい演奏のまえには版の問題は関係ない」と名言を残し演奏を絶賛したとのエピソードも有名です。
キングインターナショナル
まとめ
指揮者朝比奈隆(1908-2001)が、絶大なカリスマ性を発揮したのは、80年代も後半になってからだと思います。
僕も、朝比奈さんのコンサートに数回行きましたが、演奏終了後の拍手か掛け声の凄さに驚いたものです。ある人は、そんな蛮声が堪らなく嫌だという人もいるくらいです。
だから朝比奈さんの全盛期は、80年代以降と思われているようですが、個人的には70年代の60才代がもっとも充実していたのでは、とCDなどを聴くと感じます。
そういう意味で、この75年のライブ盤が僕の宝物です。
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