こんにちは、
ともやんです。
アンチェルの音楽は優しい。
気品があって、そつがなく、まるで世界を達観したように明るい。
マーラーの『1番』やショスタコーヴィッチの『5番』やストラヴィンスキーの『春の祭典』のような曲を演奏しても、決して下品にならず、しかも聴くものを退屈にさせない。
「クラシックは死なない あなたの知らない新名盤」松本大輔著より
チェコ・フィルの初来日(1959年秋)のおり、宿舎の赤坂プリンス・ホテルを訪ねて話を聞く機会があったが、温厚でいかにも苦労人らしい風貌と、
話が第二次大戦中の受難、とりわけ家族が自分を除いて全員虐殺されたくだりに及んでも、にこやかな微笑さえたたえた笑顔を少しも変えずに、ゆっくりした英語で淡々と語っていたのが忘れられない。
「演奏家別クラシック・レコード・ブックVol.1指揮者篇」レコード芸術・別冊より、カレル・アンチェルの解説佐川吉男氏から。
アンチェルの演奏を聴くと慟哭するのではないか、と思い、なかなか聴きだせなかったのですが、
今回、初めてアンチェルの代表的な録音でもあるチェコフィルとの“新世界より”を聴きました。
参考文献:「クラシックは死なない あなたの知らない新名盤」松本大輔著
「演奏家別クラシック・レコード・ブックVol.1指揮者篇」レコード芸術・別冊
カレル・アンチェルの名盤 ドヴォルザーク交響曲第9番“新世界より”
アントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)
交響曲第9番ホ短調 作品95”新世界より”
カレル・アンチェル指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
第1楽章:Adagio – Allegro molto
第2楽章:Largo
第3楽章:Scherzo
第4楽章:Allegro con fuoco
録音:1961年12月 プラハ
ドヴォルザーク:交響曲第9番≪新世界より≫・第6番 序曲≪自然の王国で≫≪謝肉祭≫≪オテロ≫≪わが家≫ カレル・アンチェル チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
※現在入手できるタワーレコード限定盤をご案内します。2021.7.24現在
アンチェルの名前は、もう何十年も前から知っています。
チェコの生んだ名指揮者ということも知っています。
でもその録音をなかなか聴きだせませんでした。
理由は、アンチェルの人生に訪れた悲劇からで、彼の演奏を聴くと、もうその思いが溢れ、感情が抑えられなくなり慟哭するのではないか、と怖かったからです。
でも、僕の敬愛するアリアCD店主の松本氏が、アンチェルのファンで、自身のレーベルでアンチェルの演奏を復刻したので聴いてみることにしました。
それがこのドボルザークの”新世界より”でした。
松本氏は、最高の”新世界より”とコメントしています。
そうなると聴くしかありません。
そして聴きました。その素晴らしさに胸が締め付けられました。
なんと生きた音か!
それぞれの楽器が、肉声のように心に響いてきます。
復刻が素晴らしいからでしょうか?
演奏者の息遣いまで伝わってきそうです。
宇野功芳氏の表現を借りれば、切れば血の出るような演奏と響きなのです。
カレル・アンチェルの悲劇から目を背けるな
アンチェルの最初の悲劇は、ユダヤ人ゆえで、チェコがナチスドイツの支配下になるとアンチェルは、両親と妻子と共に収容所に入れられました。
そしてその後、両親そして妻と息子はガス室で命を落とし、アンチェルのみが生還したのです。
アンチェルにとって、筆舌に尽くしがたい事件でした。
戦後、楽壇に復帰して、のちチェコフィルの指揮者となり、
厳しい練習で、チェコフィルに過去の栄光を取り戻させました。
この“新世界より”の録音がその頃のもので、本当に生きた音とはこのような響きかと思わせる、素晴らしい演奏を聴かせてくれています。
※プラハの街
そして第2の悲劇は、1968年にアメリカ演奏旅行中に起きたチェコ事件により、帰国を断念し、アメリカに亡命したことです。
この二つのアンチェルを襲った悲劇を彼はどう受け止めたのでしょうか。
それを想うと僕はなかなか彼の演奏を聴きだせなかったのです。
でも、アリアCDの復刻盤を聴いて、僕は決心しました。
アンチェルは、どんなことがあっても演奏を続けたのです。
そして人々に素晴らしい音楽を届けたのです。
だから、聴かないといけないのです!
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