こんにちは、
ともやんです。
今回は、ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮によるチャイコフスキー「悲愴」をご紹介します。
彼の代表的な名演といえば、ウィーン・フィルとのベートーヴェン交響曲全集や、北ドイツ放送交響楽団(現NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)とのブラームス作品がまず思い浮かびますよね。
だから最初にこの「悲愴」の録音を知ったときは、「あ、チャイコフスキーも録ってたんだ!」とちょっと意外な気持ちでした。
イッセルシュテットの悲愴
そして実際に聴いてみたら……これが、素晴らしかったのです。
何か奇をてらったり、感情を煽るような演出はまったくなし。
ただひたすら正攻法、ど真ん中の直球勝負。
でもその音には、不思議な感動があるんです。
録音データ
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調「悲愴」Op.74
指揮:ハンス・シュミット=イッセルシュテット
演奏:北ドイツ放送交響楽団(NDR響)
録音:1954年
復刻:アリアCD(12inch Telefunken LGX66031)
各楽章のタイム:
Adagio – Allegro non troppo(18:05)
Allegro con grazia(7:52)
Allegro molto vivace(8:34)
Finale: Adagio lamentoso(10:20)
全体:約45分
アリアCDの復刻盤
私が入手したのは、クラシックCD専門通販の「アリアCD」による復刻盤です。
店主・松本大輔さんの情熱にはいつも頭が下がります。名古屋の方なので、いつか直接お会いしたいなと思っています。
松本氏の活動には、私も大きな刺激を受けていて、このブログもその影響のひとつなんです。
中学生の頃からクラシックを聴いてきましたが、彼の情報や復刻盤は、本当に貴重な財産になっています。
まるで映画のような、敗戦直後の物語
この録音をさらに特別なものにしているのが、イッセルシュテット自身の戦後の歩みです。
1945年、ドイツが敗戦を迎えたとき、彼は45歳。
かつてベルリン・ドイツ歌劇場の音楽総監督まで務めた名指揮者でしたが、戦後は農村で疎開生活を送っていました。
そんな彼のもとを、ある日ふたりのイギリス将校が訪れます。
不安げに応対したイッセルシュテットに、彼らは思いもよらない依頼を伝えます。
「ハンブルクに新しい放送オーケストラを創りたい。あなたの力を貸してほしい」
しかもその構想は、ただの復興ではなく、“NBC、BBC、フランス国立放送並みの国際的な放送オーケストラを作る”というものだったのです。
求められたのは、ベルリン・フィルやコンセルトヘボウ並みの水準。
それは、まさに夢のようなプロジェクトでした。
夢のオーケストラの誕生
彼に与えられたのは、たった一台の車。
それで各地の捕虜収容所を回り、戦争でバラバラになった音楽家たちを集めていきました。
信じがたい苦労を重ねた末、わずか半年後の1945年11月には初コンサートを実現。
それが、北ドイツ放送交響楽団(現NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)の始まりだったのです。
イッセルシュテットとNDR響によるこの「悲愴」は、創設10周年を記念するような1954年の録音。
演奏はきりりと締まっていて、特別なことは何ひとつしていないのに、じんわり心に響いてきます。
誠実な響きに宿る、復興の願い
この演奏からは、戦後の混乱を乗り越えようとする人々の情熱や、
音楽によって国を再生させようという深い祈りのようなものが、確かに感じられるのです。
イッセルシュテットのベートーヴェンやブラームスに見られる「格調高く、端正で、心のこもった演奏」は、このチャイコフスキーでも健在。
どのフレーズも丁寧に描かれ、「ああ、この曲ってやっぱり名曲なんだなあ」とあらためて感じさせてくれます。
そして不思議なのは、そんな感動を与えておきながら、指揮者の存在をあまり意識させないところ。
それが、イッセルシュテットの“静かな凄み”なのかもしれませんね。
おわりに
派手さはなくても、深く、まっすぐ心に届く演奏。
そんなイッセルシュテットの「悲愴」は、まさに「誠実さの極み」とも言える一枚です。
音楽を通して、時代を生きた人々の想いを感じ取れる。そんな名盤を、ぜひあなたにも聴いていただきたいと思います。



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