こんにちは、
ともやんです。
今日は、20世紀の大指揮者、オットー・クレンペラーの秘蔵音源から、得意としていたモーツァルト交響曲第25番、ベートーヴェン交響曲第5番、ブラームス ドイツレクイエムを収録した2枚組をご案内します。
この音源は、リチャード・イッター(1928-2014)という人が、1952年からBBC放送の音源を個人的に集めたものからです。
イッター氏は、英国音楽の録音を積極的に行い、知られざる作曲家の発掘にも貢献した「Lyrita Recorded Edition」レーベル創立者です。
イッター氏が、当時最先端のプロ用機材を使用しBBC放送のエアチェックを行った貴重な音源からのCD化です。
クレンペラー 秘蔵音源集 1955&1958
モーツァルトの交響曲第25番、ブラームスのドイツレクイエムは初出。
ベートーヴェンの「運命」も以前マイナーレベールから出た形跡がある程度です。
モーツァルトの25番が鳴り出した瞬間から驚きの連続です。
速い!快速テンポです。
元々、クレンペラーは現代音楽も得意としリアリストで、即物的な演奏をする人でした。
ところが度重なる身体的なトラブルを克服するたびに後年の遅いテンポになりました。
1955年、クレンペラー70歳の時はまだ過渡期だったんでしょうか。
この55年のスタジオライブは、翌56年のフィルハーモニア管とのセッション録音に比べ、18~19分の演奏で約30秒ほど演奏時間が短くなっています。
そしてベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。これは凄い演奏です。
クレンペラーの生涯には大怪我がつきものですが、51年10月にモントリオール空港でタラップから転落して半年間も入院生活を送りました。その後もいろいろあるのですが、EMIのウォルター・レッグと契約ししばらくは音楽活動に専念することができました。
ところが58年10月に今度は、就寝中のタバコが原因で大やけどを負うという災難に遭いました。
このベートーヴェンの「運命」は、大やけどの少し前の演奏。
大やけどから復帰して最初に録音したのもベートーヴェンの「運命」で、やけど前のこの録音に比べ5分ほども演奏時間が伸びています。
まさに生命の危機まで危ぶまれた大やけどの前と後で比べるとその違いがわかります。
この58年ものは、何と言っても覇気と迫力に溢れています。
第1楽章のティンパニを有効に使ってたたみかけるような迫力は堪りません。
しかも木管を浮き立たせたり細部への神経を行きわたらせています。
そしてなんと言っても終楽章コーダーの追い込みが凄まじく、終了後の観客の熱狂した拍手も収録されいます。
これだけ凄いベートーヴェンを聴かせる人はいなくなりました。
「ドイツ・レクイエム」も、1961年のスタジオ盤との比較して5分ほど早くなっています。
ソリストは、バイエルン国立歌劇場で当時活躍中のバリトン、まだ22歳だったハンス・ヴィルブリンクと、カール・ベームのお気に入りだったことで知られるドイツのリリック・ソプラノ、エルフリーデ・トレッチェルを起用しています。
ぜひ聴いて頂きたい名演集です。
クレンペラー 名盤 秘蔵音源集’55、’58
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト – Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
交響曲第25番 ト短調 K. 183
Symphony No. 25 in G Minor, K. 183
1.(06:23) I. Allegro con brio
2.(03:52) II. Andante
3.(03:35) III. Menuetto – Trio
4.(04:51) IV. Allegro
total(18:41)
BBC交響楽団 – BBC Symphony Orchestra
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (指揮)
録音: 14 December 1955, BBC Studios, Maida Vale, London, United Kingdom
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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
交響曲第5番 ハ短調 「運命」 Op. 67
Symphony No. 5 in C Minor, Op. 67
5.(07:58) I. Allegro con brio
6.(09:58) II. Andante con moto
7.(05:29) III. Allegro
8.(10:37) IV. Allegro
total(34:02)
フィルハーモニア管弦楽団 – Philharmonia Orchestra
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (指揮)
録音: 24 August 1958, Usher Hall, Edinburgh, Scotland, United Kingdom
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ヨハネス・ブラームス – Johannes Brahms (1833-1897)
ドイツ・レクイエム Op. 45
Ein deutsches Requiem (A German Requiem), Op. 45
作詞 : 聖書 – Bible
1.(09:27) I. Selig sind, die da Leid tragen
2.(12:57) II. Denn alles Fleisch es ist wie Gras
3.(08:48) III. Herr, lehre doch mich
4.(05:28) IV. Wie lieblich sind deine Wohnungen
5.(6:00) V. Ihr habt nun Traurigkeit
6.(10:51) VI. Denn wir haben hie keine bleibende Statt
7.(10:12) VII. Selig sind die Toten
total(63:43)
エルフリーデ・トレチェル – Elfriede Trotschel (ソプラノ)
ハンス・ヴィルブリンク – Hans Wilbrink (バリトン)
BBCシンフォニー・コーラス – BBC Symphony Chorus
BBC交響楽団 – BBC Symphony Orchestra
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (指揮)
録音: 9 December 1955, BBC Studios, Maida Vale, London, United Kingdom
英国音楽の録音を積極的に行い、知られざる作曲家の発掘にも貢献した「Lyrita Recorded Edition」レーベル創立者、リチャード・イッター(1928-2014)。彼が当時最先端のプロ用機材を用い、1952年からエアチェックしていたというBBC放送の音源を集めた、貴重なコレクションからCD化するシリーズ第4弾。今回はベートーヴェンのみ、個人コレクターの音源から収録されています。クレンペラーの第2集となるこのアルバムは、BBC響とのスタジオ・ライヴのモーツァルトとブラームスが初出、ベートーヴェンもかつてマイナーレーベルでリリースされた形跡があるものの、ほぼ初出に近いものです。ライヴならではの高いテンションが特徴で、ベートーヴェンに至っては、翌1959年のスタジオ録音より5分以上も早くなっているのが驚き。またこちらも1961年のスタジオ盤との比較で5分ほど早くなっている「ドイツ・レクイエム」では、バイエルン国立歌劇場で当時活躍中のバリトン、まだ22歳だったハンス・ヴィルブリンクと、カール・ベームのお気に入りだったことで知られるドイツのリリック・ソプラノ、エルフリーデ・トレッチェルを起用。音質に関しては、50年代のエアチェックとしては非常に良い状態で残っており、入念なリマスタリングで、70歳を超えてなお元気なクレンペラーの力強いパフォーマンスを堪能することが出来ます。
ナクソス・ジャパン
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