こんばんは、
ともやんです。
僕が敬愛する音楽評論家宇野功芳氏。
残念ながら2016年に85歳で亡くなりました。
でも、僕がクラシック音楽に興味を持ち聴き始めてから約50年、僕は宇野功芳氏の評論を最も信頼して、氏のすすめる曲や演奏家のLPやCDを真っ先に聴きながらコレクター人生を歩んできました。
氏の評論やその歯に衣着せぬ論調は、賛否両論がありますが、僕は、氏の良い意味でのプロずれしていない、いつも真摯に音楽に向かう姿勢には敬意を表していました。
今日は、宇野氏の大好きだったブルックナーから、交響曲第2番のCDを6枚聴きましたので紹介します。
どれも素晴らしい演奏ですが、それぞれ個性に溢れています。それぞれに簡単ながらコメントしたいと思います。
ブルックナー交響曲第2番 その魅力と宇野功芳氏の功績
ブルックナーの交響曲第2番は、第1番を書いてから6年後の1872年、ブルックナー48歳の作品で、1番よりも深みを増し、第1楽章では、ブルックナーの交響曲の特徴である原始霧(減の細かい刻みによる開始)が初めて登場します。
続きチェロによる主題がたまりません。
ちょうど秋の高原に吹く風のように寂寥感を伴いながらも悲しいと寂しいという感情を超えた、清々しい印象を与えてくれます。
僕は、ブルックナーの魅力はこんなところにあると思います。
彼の曲は、決して明るかったり、陽気だったり、前向きではありません。
どちらかという暗さ、悲しさ、寂しさを伴います。
でも、どこかにそんな負の感情をいっぱい感じながら、いいんだよ、これが人生さ、これが生きるってことだよ、というなんか悟りきった清々しさを感じさせるのです。
作家の五木寛之氏のいう、他力に通じるものだと思います。
第2楽章は、宇野氏の書籍から引用します。
“第二楽章は最初から、聖フロリアン教会の自然が、眼前に浮かぶようであり、
楽曲のいたるところに、田園から得たインスピレーションと内省の声が流れ、もの想いの感情が漂う”
第3楽章のスケルツォは、素朴で武骨な味わいが素敵です。
終楽章は、前作「ミサ曲ヘ短調」の「キリエ・エレイソン」(主よ、憐れみ給え)の
テーマにはさまれ、ハッとするような祈りの感情が流れます。
ブルックナーの交響曲 宇野功芳氏の功績
宇野氏の功績のひとつに日本にブルックナーを広めたというのものがあると思います。
自身もブルックナーとモーツァルトを最も愛されていたようで、特にブルックナーを得意としていた朝比奈隆氏を高く評価され、それがブルックナーファンを増やした遠因とも僕は思っています。
その宇野氏の著書の中に次のような文章があります。
“三番、四番、五番、七番、八番、九番といった
ブルックナーの巨峰登頂に成功した人は、谷間にひっそりと咲く花のような一番、二番、六番のシンフォニーにも、ぜひ耳を傾けていただきたい。”
僕から補足すると、なにも巨峰登頂する前でもいいから、ぜひ第1番や第2番を聴いてほしいと思います。
ブルックナー交響曲第2番の名盤
今回5人の指揮者のよる6つの録音を聴きました。
どの録音も、良いところがあります。
名盤の誉れ高いヨッフムの新旧2つの録音は、特に新盤のドレスデンシュターツカペレの響きにぞくぞくっとします。
コンヴィチュニーは、もっとも古い録音ですが、ライブで大河の流れのようなゆったりとして演奏で、当時50才にして巨匠風の響きです。60才での早逝が惜しまれます。
カラヤンは、普段清楚な女性が、ばっちり入念にお化粧をしたような演奏で、最初ちょっと引きますが、聴いていくうちにこれもあるかな、と思います。
ヴァントは、さすがに構成力の確かな、明快な演奏です。
第1番に続いて僕が一番惹かれるのは、ティントナー盤です。
もっとも遅いテンポで、ブルックナーと時空を超えて、心の会話をしているような演奏です。
ブルックナー第2番 ヴァント&ケルン放送響
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲 第2番 ハ短調
Ⅰ(19:07)Moderato:Ziemlich schnell
Ⅱ(15:42)Andante:Feierlich,etwas bewegt
Ⅲ(07:33)Scherzo:schnell
Ⅳ(16:05)Finale:Mehr schnell
録音:1981年
ギュンター・ヴァント指揮
ケルン放送交響楽団
『ギュンター・ヴァント&ケルン放送SO ~ブルックナー交響曲全集』
ブルックナー第2番 カラヤン&ベルリンフィル
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲 第2番 ハ短調
Ⅰ(18:16)Moderato:Ziemlich schnell
Ⅱ(17:34)Andante:Feierlich,etwas bewegt
Ⅲ(06:12)Scherzo:schnell
Ⅳ(18:06)Finale:Mehr schnell
録音:1981年1月
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
ブルックナー第2番 コンビチュニー&ベルリン放送響
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲 第2番 ハ短調
Ⅰ(19:34)Moderato:Ziemlich schnell
Ⅱ(17:49)Andante:Feierlich,etwas bewegt
Ⅲ(08:49)Scherzo:schnell
Ⅳ(18:17)Finale:Mehr schnell
録音:1951年
フランツ・コンビチュニー指揮
ベルリン放送交響楽団
ブルックナー第2番 ティントナー&アイルランドナショナル管
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲 第2番 ハ短調
Ⅰ(20:50)Moderato:Ziemlich schnell
Ⅱ(10:53)Scherzo:schnell
Ⅲ(18:00)Andante:Feierlich,etwas bewegt
Ⅳ(21:19)Finale:Mehr schnell
録音:1996年9月16日と17日
ゲオルグ・ティントナー指揮
アイルランド国立交響楽団
ブルックナー第2番 ヨッフム&バイエルン放送響
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲 第2番 ハ短調
Ⅰ(17:57)Moderato:Ziemlich schnell
Ⅱ(14:05)Andante:Feierlich,etwas bewegt
Ⅲ(06:37)Scherzo:schnell
Ⅳ(13:17)Finale:Mehr schnell
録音:1967年
オイゲン・ヨッフム指揮
バイエルン放送交響楽団
ブルックナー第2番 ヨッフム&ドレスデンシュターツカペレ
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲 第2番 ハ短調
Ⅰ(18:03)Moderato:Ziemlich schnell
Ⅱ(14:57)Andante:Feierlich,etwas bewegt
Ⅲ(06:54)Scherzo:schnell
Ⅳ(12:46)Finale:Mehr schnell
録音:1980年7月
オイゲン・ヨッフム指揮
ドレスデン・シュターツカペレ管弦楽団
まとめ
宇野氏はランキングがお好きだったようで、著書にもその手の本が多いです。
それはそれで面白いのですが、僕は、最近あまり関心がなくなりました。
それはどの演奏にもいいところがあるからです。
以前の僕なら、この演奏は良い、あの演奏はダメと白黒つけていましたが、今は、どの演奏もいいところがあると思い、それを探すような聴き方をするようになってきました。
プロの指揮者とオーケストラが、商業目的で録音するのですから、下手ということなないでしょう。
しばらくは、いいところを探す聴き方をして行きたいと思います。
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